論理思考とシステム思考
篠田:直線的な考え方って、たとえば工場みたいな環境のなかでは非常に有効ですよね。でも自然には当てはまらない。私はこれまで対人関係がうまくいかないとき、人も自然の一つなのだから、台風がどうにもならないのと同じようにどうにもならないもんだって自分に言い聞かせるようにしてきました。この社会で生きていくには機械的な動き方や考え方が必要な場面があって、それによって物質的な豊かさが保障されているわけですから否定はしないんですが、循環的な考え方を知っていると複眼的になれそうです。
枝廣:気持ちが楽になるんですよね。
篠田:そうでしょうね。先日、あるお友達と話していて、私のことをロジカルに考えるところとそうじゃないところの両面があると言われました。でも私は人格破綻はしていないつもりなので(笑)、違うものが二つあるんじゃなくて、私のなかでは一つなんですね。それを勝手に二つに分けられてしまった。
恋愛も、人は自分が理解しやすいように勝手にステップに分解して、まず1回目のデートでお茶飲んで、次は映画に行ってと、まるで決まった手順があるような感じで話したりしますが、すべての恋愛がそんな進み方をするわけがありませんよね。
枝廣:人間はかつて直線的でない生き方をしてきたと思うんです。春になって、あの山の雪がこんなかたちになったら田植えをして、みたいにね。そこでは効率とかはあまり考えなかった。直線的に切り出して考え、最大化するという考え方は、たぶん産業革命以降出てきたものでしょう。いまはそちらに寄り過ぎているように思います。
システム思考はレンズの一つだと思っていまして、いつもシステム思考で考える必要はないけど、循環で見るとどうなんだろうとか、うまくいっていないときにどこかでつながりが切れているからではないのかという考え方をしてみる。私たちは問題があると、その近くだけを見て一所懸命解決しようとするんですけど、一歩引いて構造がどうなっているかを見ると全然違うところに解決のヒントがあったりするんです。
篠田:面白いですね。違うレンズというか、これまでの私の思考型では見いだせなかったものが、ちょっとわかったような気がします。
枝廣:ビジネスの世界で言うと、うまくいかないときの解決策にもいくつか原型があって、解決すべき問題に対して短期的な対症療法を優先することで、本来やらなければいけないことを弱めてしまうというループが企業のあちこちに見られます。たとえば商品開発力をつけるためには社員を教育する必要があるけど、時間がかかるから外部のコンサルタントに頼るとかいうことです。だけど成長の限界にしてもこの原型にしても、知っていればこのままではまずいと気がついて、どうしたらいいかという話ができるようになります。
篠田:そうですね。