米国の調査によれば、経済的な成功者ほど富の再配分に否定的である一方、低所得層ほど現在の税率に寛容であるという。そして再配分に対する個人の見解は、「自身を勝ち組と思うか、負け組と思うか」によって――実際の収入とは関係なく――左右されることがわかった。

 

 公平性、能力、信頼についての人の考え方は、自身を「勝ち組」と思うか「負け組」と思うかによって変わるのだろうか。

 新たに発表された研究結果によれば、その答えはイエスである(ノースカロライナ大学のジャズミン・ブラウン=イアヌッツィ、クリスジェン・ランドバーグ、キース・ペイン、およびデューク大学のアーロン・ケイによる研究の英語概要)。このテーマを探るため、彼らはオンラインゲームを活用して、人々の強い関心事である「富の再配分」に関する意識を調査した。

 論文執筆の過程で行われた一連の実験のうち、とりわけ興味深いものがある。研究チームは株式市場をモデルにしたオンラインの投資ゲームを作成し、参加者に40セントを与えて、最大6社まで投資するよう求めた(これらの企業は実在するものと設定)。ゲームに現実味を持たせるため、各社の事業内容、過去の株価実績、株価収益率を示し、それらの情報を解釈するための手引きも与えた。そして、投資対象を選定後にコンピュータで実際の株式市場の動きを6カ月分シミュレーションする、と伝えた。

 実際には、損失と利益はランダムに割り当てられた(株価収益率をじっくり検討した人には気の毒だが)。研究チームは参加者の3分の1に対して、現時点で「全参加者の89%よりも成績がよい」と伝え、別の3分の1には「全参加者の89%よりも成績が悪い」と伝えた。残りの3分の1は対照群として、成績については何も伝えなかった。

 最後に、最も稼いだ参加者たちは利益の20%を回収され、それを成績が悪い参加者たちの損失穴埋めに充てられた。この再配分によって、後者は資産の25%に当たる金額をボーナスとして受け取った。

 この調整を施したのち、参加者に「利益の再配分の方法をどう変えたらよいか」について意見を求めた。勝ち組は利益をもっと残しておきたいのか、それとももっと手放してもいいのか。負け組はどの程度のボーナスを受け取るべきなのか。

 大方の予想通り、勝ち組は再配分に反対する傾向が強かった。かたや負け組は、社会主義者とはほど遠く、現状の比率で構わないと考えているようだった。対照群はその中間だったが、勝ち組の意見にやや近かった。