米国人は、自分が所得階層のどの位置にいるのか十分に把握していないことが、数々の研究によって明らかになっている。ピュー・リサーチセンターの報告によれば、自分を中流階級と捉えている米国人は少なくない(2014年1月時点で44%)。そして富裕階級は実際よりも貧しいと考える傾向にある。2012年のある調査では、年収25万ドル以上の人々のほとんどが、自分はトップ20%に含まれると考えているが、実際にはトップ3%である。他の調査で、「自分が裕福だと感じられるためにはどのくらい収入が必要か」と尋ねたところ、大多数が、収入の過多に関係なく、現所得の2倍の金額を答えた。
また、コーネル大学のスザンヌ・メトラーによれば、国の再配分プログラムによって利益を得た人々のおよそ半数が、その恩恵をまったく認識していないという。まるで、レーク・ウォベゴン効果(自分のことを過大評価する傾向)と真逆のことが起こっているようだ。誰もが平均を上回っていると自己評価するどころか、事実に関係なく自分は平均的だと思っているのだ。
自分のステータスに関するこうした思い違いは、次のような笑えるデータにも表れている。2011年のギャラップの調査によると、年収25万ドルの人々のうち、自分に課されている税率が「低すぎる」と見なすのは6%に過ぎない(英語記事)。ところが同じ階層の人々のなんと30%が、「富裕者は十分に税金を負担していない」と考えているのだ(富裕者は自分なのに!)。
ギャラップの同じ調査によれば、高所得層ほど自分の税金が高すぎると感じる傾向がある。そして低所得層ほど、現状の税率で「あまり問題はない」と答える傾向が強い。これは本記事の研究結果と見事に符合する。そして、米国人は自分に「金持ち」という言葉を当てはめるのを躊躇するかもしれないが、どうやら世論調査員の前で装いたがるほどには、自分の社会経済的ステータスについて無知ではないらしいこともわかる。
こうした混乱のなかでは、自分の立ち位置を確認しておくのが有効かもしれない。ピュー・リサーチセンターは米国のミドルクラスを、年収39,418ドルから118,255ドルと定義している(2011年のドル価)。さて、あなたは自分が勝ち組だと感じるだろうか? このゲームは公平だと思うだろうか?
HBR.ORG原文:Feeling Like a Winner Changes What You Think Is Fair December 15, 2014
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サラ・グリーン(Sarah Green)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・アソシエート・エディター。