職場で助け合いを促進する5つの処方箋。他者に助けを提供するのは得意でも、助けを求めるのは苦手だ――そんな人への朗報がある。人間には「受けた恩に報いたい」という生来の欲求があるということだ。
リーダーたちは常々、自分の組織には協力やコラボレーションが足りないと嘆いているようだ。しかしその原因は多くの場合、従業員が他者に手を差し伸べようとしないからではない。むしろ、他者に助けを求めない、あるいは求めたがらないというのが実情なのだ。
なぜだろうか。第1に、助けを求めることはしばしば弱さや無知の表れとされ、自力で仕事をこなせないことを暗に示す行為だと考えられているためだ。第2に、他者に借りをつくること、恩を受けることへの不安がある。「この人に助けを求めたら、どれほどの借りができるだろう?」と気に病んでしまうのだ。
第3に、とりわけアメリカ人にありがちだが、個人の価値観が邪魔になることがある。私は最近、全米規模で行われた4つのアンケート調査から、アメリカ人が持つ10の中核的な価値観を特定した。その1つ、「自助自立」は素晴らしい特性ではあるが、自分に限界を設けてしまう作用もある。今日の組織にあっては、他者に助けを借りなければ成功はおぼつかない。
では、どうすれば助けを求めやすくなるだろうか。職場でうまく援助を求める方法、そして組織において援助を求めることが奨励される環境をつくる方法として、5つの知見を提供したい。これらは、コンサルティング会社イノベーション・プレイシズのナット・バルクリーと私の共同研究を基にしている。合わせて、助け合いによる組織力強化ツール「レシプロシティ・リング」を企業支援やエグゼクティブ教育で長年用いてきた私の経験もふまえている(英語サイト)。
1.まず自分から進んで他者を助ける
他者への支援を惜しまないという評判を築けば、人々はあなたを助けたくなるものだ。これは、あなたが直接助けたことがない人でさえも同様である(「間接的な互恵性」に関する英語論文)。ただしナットと私の研究によれば、こうした評判が効力を持つ期間は短い。過去の評判は何の役にも立たないため、常日頃から他者に手を貸すよう心がけ、評判を常に維持する必要がある。
神経学者の数々の実験によれば、助けられた恩に報いたいという欲求は人が生来備えているもののようだ(英語論文)。他者への支援がほとんどの場合自分への支援として返ってくるのは、互恵という規範が非常に強力なためである。この現象は、助けを求めることを躊躇しがちな人にも心理的なメリットをもたらす。日頃から他者を助けていれば、自分から助けを求めることがはるかに容易になるのだ。