2.自分が何を頼みたいかを把握する
 初歩的なことに思えるかもしれない。しかし、何を頼めばよいか明確にできず苦労する人が多い。よく耳にするのはこんな言葉である。「聡明な人々が互いにしっかり協力し合っている職場、何でも頼み合える職場で働きたいとずっと望んできた。でも、何をどう頼めばよいかわからない」

 そういう状況に対処できるよう、次のような準備をしておこう。いま取り組んでいるプロジェクトの1つに焦点をしぼり、目標を書き出してみる。最も重要な目標を1つ選び、その達成に必要なアクションとリソース(資料、情報、データ、助言など)をリストアップする。これらのニーズを基に、後述するSMARTというルールに沿って質問を組み立てていけばよい。

 長期的なものとしては、自分が望む未来を詳細に書き記す「ビジョン・オブ・グレイトネス」(偉大なるビジョン)という方法がある。これは最初にミシガン大学社会調査研究所の故ロン・リピットによって考案され、のちに名高い食品事業グループであるジンガーマンズによって優れた技術へと高められた(その8つのステップはこちらの英語サイトを参照)。ビジョンは自分を奮い立たせる内容とし、かつ戦略的に妥当であり、そこに目標も組み込まれている必要がある。最も重要な目標を1つ選び、それを達成するには何が必要かを自問してみよう。そして前述の手順に従って、必要なアクションとリソースを書き出し、頼むべき事項とする。

3.「SMART」に沿って依頼する
 依頼を適切な言葉で伝えていないために、相手がうまく対応できないということがよくある。依頼を明確にするには「SMART」のルールに従えばよい。

・具体的に示す(Specific)
・なぜそれが必要なのかを示す(Meaningful)
・どう行動してもらいたいかを示す(Action-oriented)
・正直に、本当に必要なことを頼む(Real)
・期限をはっきり示す(Time-bound)

 これら5つの条件を満たしていれば、相手は応じやすい。

4.他者の知識や人脈を過小評価しない
 私のこれまでの観察、そしてスタンフォード大学経営大学院のフランク・フリンらの研究によれば、人間は他者が持つ利他の意思を過小評価しがちであり、助けを求めても相手が応じてくれる可能性は低いだろうと思い込んでいる(英語論文)。実際には、相手が何を知っているか、どんな方法で助けてくれるかは、頼んでみなければわからないのだ。

 たとえば、私があるグローバル規模の医薬品開発チームで「レシプロシティ・リング」の導入を支援した時のことだ。研究者の1人が、誰も応えられないだろうと思いながらこう尋ねた。「外部ベンダーに5万ドル払って、アルカロイドPC(植物から採取できる薬品の一種)を合成してもらうつもりなんだが、もっと安い方法はないだろうか?」。すると、別の研究者がこう答えた。「そうか、それが必要だとは知らなかった。うちの研究室はいま稼働に余裕があるから、来週やってあげるよ。タダで」