ノルマ、報酬、公平さ……
営業担当者の不満は尽きない

 私はビジネススクールの教員に転じる前、マネジメント・コンサルタントだった。当時、私のキャリアにひときわ大きな影響を及ぼしたのが、グローバルに事業展開する消費財メーカーの、アジア地域の営業部隊とのプロジェクトだった。その会社ではルートセールス、つまり、担当者が家族経営の食料雑貨店を訪問して、御用聞きをする形態を取り入れていた。各マネジャーは、報酬をめぐる部下たちの不満に耳を傾けることに非常に多くの時間を取られており、その実情に私はいたく衝撃を受けた。

 担当者たちは、「問題が山積している」との思いに駆られて不満を述べ立てていた。とても果たせそうもない、あまりに厳しいノルマを課せられている。不利な地域を担当させられていて新規顧客の獲得には限界がある……。

 時には、公平さにまつわる苦情もあった。ノルマを果たして多額の報酬を得た者が、単に有利な地域を担当しているだけで過大な報酬を手にしている「怠惰な」同僚を何とかしてほしいと上司に詰め寄るのだ。私が担当していたこの消費財メーカーでは、報酬にまつわるありとあらゆる不満が営業担当者から噴出していたはずである。