報酬制度は業績拡大の最強ツールである

 私はハブスポットで4番目に採用された従業員である。同社の2人の共同創業者と出会ったのは、マサチューセッツ工科大学スローン・スクール・オブ・マネジメントでともに学位取得を目指していた頃だ。彼らは聡明で、大きな使命を抱いていた。それは「オンライン上のコンテンツを活用して潜在顧客を企業のウェブサイトに誘導し、その企業のマーケティングの刷新を後押しする」というもので、その手法はインバウンド・マーケティング[注]として知られている。

 私が任された仕事は、営業チームの構築だった。エンジニアとして教育を受けてきた私には営業経験がなく、キャリアもコードを書くプログラミングの仕事から始まった。しかし、この経歴は予想以上に役に立った。指標を重視し、プロセス志向で物事を見るように訓練されていた私は、そうしたレンズを通して、営業管理に関する慣例的な考え方の多くを覆した。

 たとえば、勘に頼って社員を採用するのではなく、営業関連データを丹念に追跡し、成功の予測因子を特定した。そのうえで、当社トップクラスの営業担当者と非常に似通った特徴やスキルを持ち合わせた人材を探すようにした。新入社員のトレーニングでは、優秀な営業担当者の顧客訪問に同行させる代わりに、管理統制されたプログラムを開発した。これにより、新入社員には当社のテクノロジーにじかに触れさせてから、潜在顧客に体系的に働きかけるよう教育したのである。