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成熟市場にあるタクシー業界の生存競争は熾烈を極め、従来のビジネスモデルを見直すべき時にある。しかし、そこで働く乗務員の就労動機は曖昧なことが多く、必ずしも仕事に対して積極的であるとはいえないのも事実だ。既存のモデルに変革を起こすためには、まず従業員のやる気を引き出すことが不可欠である。家業の日本交通を継ぎ、常識に囚われない新規サービスの提案などで注目を浴びる川鍋一朗氏は、この課題をいかに解決したのか。従業員のモチベーション向上に成功した3つの仕組みを中心に、その秘訣を論じる。
拾われるタクシーから
選ばれるタクシーへ
タクシー業界では全国で約40万人の乗務員が働いており、1.6兆円の売上げがある大型産業である。ただし、その市場規模はピーク時の約3分の2に減少した。その一方で、車両台数は20数万台でほぼ横ばいの状況となっている。そこには縮小するパイを各社が奪い合う構造があり、タクシー会社間の競争は年々熾烈化している。
単に乗務員の数を増やしたり、車両数を増やしたりすることでは、この厳しい環境下で勝ち抜くことはできない。スマートフォンなどIT技術の発達によって、お客様と企業、お客様と乗務員が直接つながる時代になった。これからはお客様がタクシー会社を選ぶ時代になり、さらには個人を名指しで選ぶ時代になる。つまり、路上で偶然拾われるタクシーから、選ばれるタクシーへの変貌が求められているのだ。