モチベーションが多様化する時代
今月のハーバード・ビジネス・レビューでは「営業のモチベーション」を特集しました。ラインナップは、HBR(Harvard Business Review)からの翻訳記事3本と日本版オリジナル記事2本です。
HBRの3本は、従来の金銭的インセンティブへの見直しを迫る内容です。一般論ですが、欧米の企業の報酬制度はより成果に直結しています。その結果、アウトプットへの意識が高まる効果があります。しかし、ここに来て金銭的報酬による効果の限界がこの3本から感じ取れます。それ以外の学習や将来性を加味したインセンティブへの移行が真剣に論じられているのが、印象的です。この真剣さは徹底されており、数値化による詳細な検証を試みているような、改善の方法論は見習うべき点が多々あります。
日本版オリジナルの1つ目は、電通社長の石井直さんへのインタビューです。日本で鉄壁の営業力を誇る企業と言えば電通。これだけのロングインタビューを受けられるのは初めてのようです。石井さんが強調されたのはチームのモチベーション。営業出身として、ご自身のマネジャー経験から「プレゼンに敗れた結果をメンバーに伝える辛さ」という逆の表現で、モチベーションを表現されたのが印象的でした。
2つ目は、日本交通の再建に成功した川鍋一朗社長の寄稿です。報酬が売上げに大きく依存する職種であるタクシー乗務員の意識を変え、付加価値の高いサービスを実現した川鍋さんは、「乗務員の昇級制度」と「営業所単位の競争」を導入されました。
欧米企業と日本企業の違いは明確ですが、モチベーションの源泉をより複合的に捉える発想は共通しています。働く人の動機も多様化しているなか、モチベーション設計にもより多様性が求められる時代になったことは確かです。(編集長・岩佐文夫)