新しいテクノロジーを取り込み、常にマーケティングを進化させ続けるために、マネジメントは何を意識すべきか。グーグルのマーケティングチームの人気連載、最終回。

 

 デジタルテクノロジーによるマーケティングの発展は、真に顧客との絆を構築し、経営課題の解決に貢献する、そしてビジネスの成長ドライバーとなる可能性を広げてきたことをここまでの連載でみてきた。最終回は、新しいテクノロジーを取り込み、常にマーケティングを進化させるために、私たちは何を意識すべきか考えてみたい。

第1回でも指摘したとおり、デジタルテクノロジーによってマーケティングはユーザーを中心としたものへと変わっている。またユーザーと結びつくためのテクノロジーも日々進化している。このような環境の中、マーケティングが生み出す価値を最大化するには、デジタルテクノロジーの進展とともに変化する生活者の行動に対応し、新しいテクノロジーを積極的に取り入れ、進化する必要がある。そのためには、マーケティング組織もイノベーションを志向していくことが重要である。

イノベーションを生み出すカルチャー

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岩村 水樹(いわむら・みき)
Google マネージングディレクター, APAC ブランド&マーケティング担当 CMO, Japan
東京大学教養学部卒業後、電通に入社、クライアント企業のマーケティング コミュニケーション戦略の策定、実施に従事した後、スタンフォード大学にて経営学修士号を取得。コンサルティング、ベンチャー経営、ラグジュリーブランド・マネジメントに携わる。 2007 年グーグル株式会社に入社し、日本およびアジアのマーケティングに携わる。経営戦略、マーケティング、ブランディングに関する著作を有する。

「イノベーション」を実現するためには、これまでのやり方とは異なることを受け入れ「変わって」いかなければならない。短期的には、苦労や痛みが伴うものだが、その価値は十分にある。グーグルでマーケティングを行うことで得た知見の中でも以下の4つが重要だと考えている。

1. エンパワーする(自由を与えて、見守る):人は自らのアイデアが実現される可能性のある自由度が高い環境で働くことで、発想も豊かになり、創造的になりやすい。大きな課題を与え、その解決策を考えて実行できる権限を与える。こうしたメッセージを社員が直に感じることができるプログラムの一つとして、グーグルには「20%ルール」というものがある。これはそれぞれの興味や希望に応じ、担当業務外であっても積極的に新しいプロジェクトに取り組める。社員に自由度とオーナーシップを持たせ、やる気を醸成し、主体的に考えて行動することで思いがけないものが生まれるかもしれない。イノベーションの根幹はここにある。