企業は既存市場と未開拓市場の両方で競争しなくてはならない――これがブルー・オーシャン戦略の1つの要諦だ。その両立を維持するために、「PMSマップ」を利用して事業ポートフォリオのバランスを図示してみるという方法がある。

 

 アップルは2015年度第1四半期の業績発表で、またもや収益の最高記録を塗り変えた(売上高、純利益ともに過去最高を達成)。創業者にしてビジョナリーであったスティーブ・ジョブズの死後、ウォール街から不安視されるなか、アップルはいかにして株価を維持し、投資家に成長可能性を信じさせてきたのだろうか。

 アップルとマイクロソフトの近年の動向を比較してみよう。もはやカリスマ創業者が率いてはいない両テクノロジー企業は、それぞれどのように「レッド・オーシャン」(競争の激しい既存市場)または「ブルー・オーシャン」(競争のない未開拓市場)で泳いできたのか。

 過去15年間にわたり、アップルは一連の市場創出型の戦略、つまりブルー・オーシャンの開拓で成功を収めてきた(例:iMac、iPod、iTunes、iPhone、App Store、iPad)。2001年のiPodの発売から2014年度末までに、アップルの時価総額は、売上高と利益の爆発的な伸びに伴って75倍超に急上昇した。

 同期間に、マイクロソフトの時価総額の伸びはわずか3%に留まり、アップルの5倍近くあった収益は約半分の規模にまで縮小した。ウィンドウズとオフィスという2つの従来製品が、同社の利益の80%近くを支えている。どちらの製品も堅実な収益源かもしれないが、市場創出型の魅力的な製品やサービスを欠く同社の製品ポートフォリオはレッド・オーシャンの色合いが濃く、それが法外な代償となってきた。

 実は、同様の高い代償を払っている企業は非常に多い。我々が100件以上の新規事業立ち上げについて調べた結果、企業が新規事業の立ち上げと称する行動の86%は、実質的に市場競争型であることがわかった。つまり既存の市場空間における漸進的な改善であり、たとえばパスタメーカーがグルテンフリー・パスタの新製品を売り出すなどである。しかし、この86%を占める市場競争型の事業は、事業の立ち上げによる総収益の62%、総利益の39%を生み出すに留まった。

 これに対し、残り14%――市場創出型、もしくは既存市場を刷新する新規事業――は、総収益の38%を生み出し、総利益の実に61%を占めていた。言い換えれば、ブルー・オーシャンにこそ収益性の高い成長を見込めるのだ。

 アップルを含めたすべての企業にとっての課題は、いかにして現在の収益源である既存事業への投資を続けながら、並行して将来の成長をもたらす事業を生み出すかである。