雑談しながら描き始めた3人衆。集中すると無言に

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描き方を説明するKuniさんこと、谷澤邦彦さん

 鑑賞ワークのあとはKuniさんが登場し、絵を描くためのレクチャーに入ります。机の上には、画材のパステルと絵のサンプルが並んでいます。徳重さんはサンプルを見て、「きれいですね、さわっていいですか?」と手にとって眺めています。桑原さんはパステルの説明を聞きながら、パステルのにおいを嗅いでいます。まさに五感を使って、絵を描くというワークに向き合おうとしているようです。

 パステルは2色以上の色を塗って混ぜることによって、新しい色を紙の上でつくることができます。桑原さんからは「黒はどうやってつくるのですか?」という質問が。Kuniさんが「赤・青・黄色、信号の三色を混ぜると黒になりますよ」と答えました。また、すべての色を混ぜるとグレーになるという説明も。与えられた10色のパステルからつくれる色は、無限にあるのだそうです。

「こうして塗ったパステルをこすって、ぼかしたり色を混ぜたりすることを『こすりんぐ』というんです」とKuniさんがジョークを言うと、桑原さんが「INGということですね」と真面目に反応し、中川さんが頷く。みなさん、リラックスした雰囲気で思ったことを口に出しつつ、真剣に説明を聞いています。

 絵を描く用紙は、正方形の色紙です。12色の色紙の中から、色を一つ選びます。これには、「絵は白い紙に描く」という固定概念を外すという意図があります。また最初に1枚の紙を選んだら、その紙に描き切るというのがこのワークショップのやり方です。

 ひと通り絵の描き方を説明したあとは、テーマ発表です。絵のテーマは「働くうえで大切にしていること」。言葉で表現した上で、それはどんな色なのか、そんな世界観なのかということを、まずはワークシートに書いていきます。

 3人ともワークシートへの記入はあっさりと終わり、次々とトイレに立つという展開に(笑)。じっくり腰を落ち着けて絵を描く前の、下準備といったところでしょうか。戻ってきた人から紙を選んでいきます。

 空のような水色の紙を選んだ徳重さんは、「最初のコンセプトが大事だよな」とつぶやき、目をつぶって上を見たり、紙に目を落としたりして、考え込んでいます。

 桑原さんは、じっと下を向いて考えたあと、中央に丸のようなものを描き始めました。

 次いで、徳重さんは白いクレパスを手に取り、中央に丸を描いています。その丸を中心に外へ向かって5本の線を引き、赤色を重ね始めました。

 しばらく、クレパスを手に持ちながら考え込んでいた中川さん。5分ほどしてから、右上に青を塗り始めました。

 最初は会話をしながら進めていた3人。10分ほどすると話し声がなくなり、描くことに夢中になっていきました。

 徳重さんは、忙しく手を動かし、頭のなかのイメージに手が追いつかないような様子。桑原さんは、描いては考え、また描き出す、ということを繰り返しています。練り消しをこねながら、イメージをふくらませているようです。中川さんは、じっくり考えながら少しずつ、着実に画用紙のなかを埋めていきます。