競争の激しい市場から抜け出し、競争のない世界へ出よう――ブルー・オーシャン戦略の考えは多くのビジネスパーソンを虜にしたが、レッド・オーシャンの状況はますます深刻化している。大企業が既存事業から新たな事業にいかに転換すればいいのか。

 

この10年でブルー・オーシャンも台頭したが、レッド・オーシャンはますます濃くなった

 『ブルー・オーシャン戦略』が刊行されたのが2005年。競争の激しいレッド・オーシャンを避け、いまだ開拓されていないブルー・オーシャンに乗り出すことを高々と提唱した本書は、既存ビジネスの競争激化に苦しむ人や、新規ビジネスを成功させたい人、そしてスタートアップ企業を立ち上げた人などに大きな賛同と共感を得ることになりました。

 それから10年経ち『ブルー・オーシャン戦略』が大幅改訂され新版として発売されました。初版が発売された10年前と言えば、スマートフォンは普及しておらずパソコンが一人一台になる社会が予想されていました。ソーシャルメディアもなければ、クラウドサービスもなし。ビッグデータという言葉もなければ、ドローンもクルマの自動運転も誰も興味をもっていませんでした。つまり、いまのデジタル社会の中心的な存在が、この10年の間に続々と登場したのです。

 新しい市場が生まれた一方、既存の市場での競争はますます激化しています。特に日本のような成熟市場では人口減少も相まって、小さくなる市場でのシェア争いはし烈を極め、価格競争が利益率低下を招いています。つまりレッド・オーシャンは広がっています。この10年でブルー・オーシャンは確実に台頭してきた一方、レッド・オーシャン市場はますます深刻な状態となりました。

「誰もが乗り出さない新しい海を目指す」とは言うのは簡単ですが、実践するのは難しい。誰もいないのは需要がないから」という可能性も否定できず、競争が激しくてもレッド・オーシャンには競合が群がる以上、ニーズが確実にある証拠というリスク回避の思考が優勢になりがちです。