ネットとの相性抜群の自動運転
――ネット企業が自動運転市場に参入してくるのはなぜですか。
ネットと自動運転は相性がいいからです。たとえば、自動運転を行うには、地図を更新して常に最新情報にしておく必要があります。新しい道路の開通、道路工事や事故による通行止めなどの情報を把握する必要があるからです。常時接続が必須になるでしょう。一方、自動運転によって、人間は運転から解放されるので、ドライブの時間を自由に使えます。その間、大半の人は音楽や映画鑑賞、ゲーム、SNSなどネットのサービスを利用することになるはずです。
広告媒体としても、自動運転車はネット広告を上回る大きなポテンシャルを秘めています。たとえば、「中華料理」などと検索すれば、その日の割引クーポンの紹介などが出てきて、希望すれば店まで客を運んでくれるからです。タクシー料金を無料にするサービスも登場するでしょう。いわば走る広告端末になるわけです。自動運転タクシーが登場すれば、外国人観光客がやってきた時にも便利なサービスを提供できます。英語、中国語、韓国語などはもちろん、東欧やアジアの国々の言葉にも音声認識技術によって対応できるからです。さまざまな名所旧跡めぐりを組み立てることも可能です。
私でも、このくらいのサービスは思いつくのですから、ネット企業の人たちは、もっと多様なサービスを考えていると思います。
――自動運転技術は、私たちにどのようなメリットをもたらしますか。
まず交通事故の減少です。判断ミスや操作ミスなどがなくなるので交通事故の9割は減らせるといわれています。また、交通渋滞の解消も期待されています。事故が減れば事故渋滞が減少し、自動化によって坂道などでの速度低下などを原因とした交通渋滞がなくなるからです。また、物流のドライバー不足も解消されます。
最もメリットがあるのは過疎化によって公共交通が貧弱になっている場所でしょう。バスもないし電車もない。タクシーの営業エリアからも外されているような地域は珍しくありません。クルマがなければ買い物にも公民館にも行けないので、運転に不安を抱える高齢者でも、自分でハンドルを握っているのが実情です。こうした場所に自動運転が導入されれば、過疎問題のかなりの部分は解決できると思います。
まもなくロボットベンチャーのZMPとネット企業のディー・エヌ・エーが合弁で設立した会社「ロボットタクシー」が神奈川県の「さがみロボット産業特区」で超高齢社会を乗り切ることをテーマに「ロボットタクシー」の実験に入ります。50人くらいのモニタ―を募集して、買い物などで使ってもらう予定です。もっとも、現状の法律では、無人のクルマは公道を走れないので、自動運転車に運転手がハンドルから手を放し、何かあれば、すぐ人間が運転できるという状態で実験を重ねます。