米国のマーケティング会社が、コンテンツ・マーケティングとネイティブ広告の違いを比較した調査結果を報告する。広告やメディアを取り巻く環境は日米で異なるが、2つの手法の違いを把握する一助となるだろう。
今日、多くの企業は自社ブランドへの認知を獲得するために、コンテンツ・マーケティングとネイティブ広告を利用している。広告代理店MDGの調査によれば、米インターネットユーザーの70%が、製品について従来の広告ではなくコンテンツを通して知りたいと答えている(英語記事)。
だが、コンテンツ・マーケティングとネイティブ広告は、ブランド認知を高める確実な方法なのだろうか。そして、どちらのほうが、費用対効果が大きいのだろうか。
我々フラクタル(Fractl:コンテンツ・マーケティング企業)はそれを探るために、モズ(Moz:マーケティング・ソフトウェア企業)と協働し、コンテンツ・マーケティングを専業とする30のエージェンシーにアンケート調査を実施した。調査では、コンテンツのフォーマットについて、および費用対効果を測る指標について尋ねた。その結果は後述するとして、まずはコンテンツ・マーケティングとネイティブ広告の違いと目標をおさらいしておこう。
コンテンツ・マーケティング企業は、ブランドのためにキャンペーンを立ち上げて、複数の一流媒体に取り上げてもらえるよう売り込みをかける(こちらが一例。摂食障害者を支援するサイトbulimia.comは、アメコミのヒロインをより実際の人間らしい体型に描き直し、ハフィントンポストで記事にされた)。通常、媒体はキャンペーンについて報じる時に、出典としてそのブランドへのリンクを張る。そのリンクによってオーガニック検索(広告部分を除いた検索結果)のランキングが上昇し、企業サイトへの直接訪問も増える。そしてソーシャルメディアでのエンゲージメント(ユーザーがブランドに対して示す反応・愛着)が強まる。
一方のネイティブ広告では、ブランドが単一の媒体と提携してコンテンツのプロモーションをする(洗剤のオールとバズフィードの提携によるネイティブ広告の例がこちら)。「スポンサード・コンテンツ」とも同義であるネイティブ広告によって、月間数百万のユニークビジターを抱える一流媒体での掲載枠が保証される。
我々はデータに基づいて、ネイティブ広告とコンテンツ・マーケティングの有効性を比較した。その結果がこちらだ(英語サイト)。
まず、コンテンツ・マーケティングを検証した。平均すると、エージェンシーの65%が毎月1~10件のキャンペーンをクライアント企業のために実施している。1つのキャンペーンに含まれるのは、アイデア創出、コンセプト調査、コンテンツの設計、そして最後にプロモーションだ。コンテンツの制作が完了すると、それをメディア担当部門が引き継いでキャンペーンをマスコミに広める。目標は、権威あるウェブ媒体のライターにキャンペーンを取り上げてもらうことだ。
コンテンツ・マーケティングの黎明期には、ウィジェットとリスト記事(○○をする10の方法、など)ばかりだった。やがてグーグルが、内容の薄いウェブページと価値の低いリンクスキームを設けているブランドに対してペナルティを与えるようになると、業界は慌てて質の高いコンテンツの作成に取り組みだした。そしてエージェンシーは一部の媒体に倣い、コンテンツを「記事」と「インフォグラフィックス」のフォーマットでつくる割合を増やした。
およそ半数のクライアント企業は、次の3点によってコンテンツ・マーケティングのキャンペーンにおける成果を測定している。①獲得したリード(見込み客)およびコンバージョン(成約)の数、②質の高い(つまり権威ある媒体からの)被リンクの数、③ソーシャルメディアでのシェアの総数だ。媒体によるリンク数(メディアに取り上げられた回数)はキャンペーン1件当たりの平均で27だった(異常値は除外)。しかし各エージェンシーの「最も成功したキャンペーン」における被リンクの平均は422であり、中央値は150だった。
次に、価格を見てみよう。エージェンシーの70%はクライアント企業に月額制のサービスをパッケージで提供している(キャンペーン制作、インフルエンサー・マーケティング、コンサルティングなどを含む)。月額は次の5つに大別できる。1000ドル未満、1000~5000ドル、5000~1万ドル、1万~5万ドル、5万~10万ドルだ。コストを大きく左右するのは、プロジェクトの制作規模(プレスリリースか、インタラクティブグラフィックスか等)と、リーチ(インフルエンサー・マーケティングをするか否か等)である。
調査結果によれば、5000~5万ドルの範囲におけるキャンペーンが、金額に応じて最も多くの被リンクを獲得していた。言い換えると、この範囲の金額を投じれば、革新的で大規模なキャンペーン、インフルエンサー・マーケティング、そしてコンテンツの拡散が可能であるということだ。これより低予算になると、さほど多くの施策が打たれていない。有効なキャンペーンを打つだけの資源がないクライアント企業もあったようだ。そして興味深いことに、支出が5万ドルを超えると、それ以上投じても創出される価値は増えていなかった。