コンテンツ・マーケティングに続いて、我々はネイティブ広告を検証した。費用に関するデータを、コンテンツ・マーケティング企業のレレバンスによる報告書から収集し、そこに我々の持つ100のデータポイントを加え、総計約600の媒体におけるネイティブ広告費を調べた。そこに含めたのは、検索エンジンによる検索結果の大部分を占める一般的なニュース媒体、およびソーシャルメディアでのフォロワーが10万を超える媒体だ。
一見すると、ほとんどのブランドにとって、媒体との提携によるネイティブ広告の費用は法外であるように思われた。たとえば『タイム』誌のサイトと共同でキャンペーンを打つ場合、クライアントが支払う費用は20万ドルだ(ナショナルジオグラフィックは15万ドル、バズフィードは10万ドル)。一流媒体のネイティブ広告費を平均すると、5万4014ドルになった。
なお、媒体の信頼性や権威を示す尺度である「ドメイン・オーソリティ」のスコアが100点満点中80点以下の媒体については、我々は二流媒体に分類した。これらの広告費は70~8000ドルにまで下がる。
ネイティブ広告は明らかに高額だが、その見返りはいかほどだろうか。我々は、スポンサード・コンテンツの代表的存在であるバズフィードで展開された38のネイティブ広告キャンペーンと、当社フラクタルによる58のコンテンツ・マーケティングのキャンペーンを検証し、それぞれのリーチ(被リンク数で測定)およびユーザーへのエンゲージメント(SNSでのシェア数で測定)を比較した。
全体として、フラクタルのコンテンツ・マーケティングのほうが、バズフィードのネイティブ広告よりも多く媒体に取り上げられ、シェアされていた。一例として両社の最も成功したキャンペーンを比較してみよう。不動産情報サイトのモボート(Movoto)のためにフラクタルが実施した11のキャンペーンは、1件当たり平均で146回メディアにリンク(記事化)され、1万7934回シェアされた。一方、バズフィードがインテルのために展開した13のキャンペーンでは、他メディアによるリンクは毎回平均1回で、シェアは1万2481回だった。
これらの結果と関連するが、調査会社eマーケターの報告によれば、企業の幹部がネイティブ広告に関する課題として最もよく言及するのは「規模拡大の難しさ」である。提携サイトのみでの掲載に出資しているのだから、リーチの範囲に限界があるのは当然だ。
そしてもう1つの障壁は、グーグルがネイティブ広告(つまりPR記事)を「有料リンク」と見なしていることだ(訳注:リンクを張ることで対価が支払われる有料リンクは、検索順位に影響を及ぼす場合はグーグルのガイドラインに違反する。そして有料リンクの埋め込まれたPR記事もガイドライン違反となる)。したがって、ネイティブ広告を通して当該企業の検索ランキングを上げるのは難しい。
リーチの限界というハンデがあるネイティブ広告は、費用に見合う価値があるのだろうか。潤沢な予算を持つ企業にとっては、自社のブランドを権威ある媒体と連携させる意義がある場合、または適切なニッチ市場にアピールできる場合には有益となる。ネイティブ広告は、従来型のバナー広告およびその他のアウトバウンド・マーケティングの手法よりも、クリック率が高いことが証明されている。したがって、それらの代替として行うならば意味があるだろう。
私には(コンテンツ・マーケターという仕事の性質上)、幾分バイアスがあるのかもしれない。それでも、データに基づくこれらの調査結果は、コンテンツ・マーケティングのほうが費用対効果が高いことを示唆している。複数の異なる媒体やオーディエンスを介して広いリーチを得たい企業にとっては、特に有効だ。しかし、一流媒体での掲載枠の確保が主な目的であれば、ネイティブ広告のほうが得策と言える。
HBR.ORG原文:Comparing the ROI of Content Marketing and Native Advertising July 06, 2015
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ケルシー・ライバート(Kelsey Libert)
コンテンツ・マーケティング会社Fractlのパートナー。バイラル・マーケティングに関する講演も行う。