研究者らは第3の実験で、別の可変要素に着目した。PCを使った学生は、手書きの学生よりもメモの語数が格段に多い。そこで2人は考えた。「より多くの内容を外部記憶装置に収めているのだから、自分のメモを復習する機会を与えれば、テストの成績が上がるのではないか」。PCを用いれば、直後には内容を思い出しにくくても、時間が経過すれば詳しいメモが役立つことになるかもしれない。
この実験では、参加者にノートPCか筆記用具のいずれかを与えて、講演のメモを取らせたあとで、「来週、講演についてのテストを受けに来てもらいます」と告げた。翌週、テスト前に10分の時間を与え、参加者らに自分のメモを復習させた。
PCを使用した学生は、やはりメモの分量が多かった。だがテストの結果は、概念理解と事実関係の両方で、手書きの学生のほうがよい成績を上げたのである。
この最後のテストで明らかになったのは、PCを使うと逐語的にメモを取る傾向が強まる結果、学習が妨げられてしまうという可能性だ。「メモの分量が多いことには、ある程度のメリットがある。しかし、何も考えないまま単に言葉を書き連ねるやり方をすると(これは手書きではなくPCを使ったときに起こりがちだ)、そのメリットも消えてしまう」とミューラーとオッペンハイマーは述べている。
読者の皆さんは、詰め込み式のテスト勉強をする機会はもうないかもしれないが、会議で出てきたフレーズや日付、統計データなどを、その後に思い出す必要はあるだろう。私たちが会議でメモを取るのはそのためだ。デジタルツールでスマートに仕事をする方法が多々あるのは事実だが、ノートPCやタブレットを机に残し、ノートとペンを持参するようにすれば、より多くのことが頭に入るかもしれない。
メモを取る方法に加えて、書く「内容」にも十分に注意を払おう。スライドを書き写すことばかりに気を取られて、話し手の言葉に耳を傾けることがおろそかになってはいないだろうか。メモは自分の言葉で書こう。そうすれば、ただコピーするのではなく内容を咀嚼し、要約しやすくなるはずだ。
もちろん、会議のタイプはさまざまなので、出席する会議に応じた判断が必要だ。いくつかの日程やTo Doリストを書き留めるだけ、あるいはインターネット上の資料にアクセスする必要があるときは、ノートPCやタブレットを持参すればいい。しかし、プレゼンテーションや進捗報告、業績評価のような会議では、記憶にしっかり留めるべき情報がある。デジタルデバイスを手放してノートとペンを手に参加することで、自分の記憶力が活躍してくれるかもしれないのだ。
HBR.org原文:What You Miss When You Take Notes on Your Laptop July 31, 2015
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