5段階評価や相対評価など、ランク付けによる人事考課を見直す大企業が、米国などで増え始めているという。人材確保、チームワークの促進、能力開発などの面で大きなメリットがあるからだ。

 

 数年前に我々は、いくつかの勇気ある企業が自社の業績評価システムからランク付けをなくす試みを始めていることに気づいた。ジュニパーネットワークスやアドビなどは、社員を5段階で評価したり、分布曲線による相対評価(いわゆる強制的ランク付け)で査定したりするのをやめた。業績の個別評価はさまざまな方法で続けており、成果に基づく報酬制度も維持している。しかし、それらを画一的なランク付けに頼ってはいない。

 2015年の初めまでには、従業員数にして150万人超に相当する約30の大企業が、同様の方向に転じている。これらの企業は単一の数値による業績評価を行わず、上司と部下による継続的で質の高い対話を重視している。

 我々が所属するニューロリーダーシップ・インスティテュートでは、2011年から、この潮流について詳細な研究を行っている。当時複数のクライアントから、「モチベーションと脳に関するニューロリーダーシップの研究によって、標準的な業績評価が功を奏しない理由がよくわかった」という声が聞かれるようになった。それをきっかけに、このテーマに関する我々の関心が高まったのだ。

 我々の研究結果によれば、社会的な「アメとムチ」は、人が地位・上下関係や公平性に対して持つ感覚と同様に、脳内で特定の反応ネットワークを強く活性化させる。この事実は、人がランク付けによる評価に対して強い反応を示す理由であるとともに、より優れた評価システムを設計する方法を指し示すものだ。

 ランク付けをなくす、という考え方に困惑する人事部門の幹部は多くいる。会社は、何でも数値化して分析することが好きだからだ。尺度を取り払うという考えは異端に近い。ランク評価の廃止はおそらく、成果連動報酬の重要性を認識していない中小企業が率先して実施している、例外的なケースである――我々の研究を読んで連絡をくれた企業幹部の中には、そう思い込んでいた人も多くいる。

 しかし2015年中盤になると、この流れは加速し始めた。コンサルティング会社のデロイトやアクセンチュア、医療保険のグローバル大手シグナに加え、ゼネラル・エレクトリック(GE)までもが(相対評価の考えを一般に広めたのは同社だ)、自社の業績評価システムの変更を宣言したのだ。2015年9月までには、51の大企業がランク付けによらない制度に移行している。人材関連サービスのバーシン・バイ・デロイトによれば、米企業の約70%が業績評価方針を再検討中であるという。

 我々は2015年11月に開催されるニューロリーダーシップ年次サミットに合わせて、評価制度を変更した30社に関する詳細な研究報告を発表する。本記事では、脱ランク付けの傾向が勢いを増す、4つの明白な理由を示したい。