人工知能は人材の価値を際立たせる

 2つ目の理由は、人工知能に代表されるITの進化です。ビッグデータと高度なアルゴリズムが登場したことで、これから仕事の多くが自動化されます。「ルーティンワーク」と言われる日常業務のほとんどが、機械に代行させることが可能となり、また機械にいちはやく代行させた企業が効率性で優位になります。

 そんな時代に、人が価値を生み出す仕事とは何か。それは正確に迅速に作業をこなすことではなく、状況を判断すること、新しいビジョンを打ち立てること、人をやる気にさせることなどです。これらの仕事の特徴は、数値化できないことと、そして優越の差が青天井であることです。

 作業の個人差は大きくても2~3倍でしょう。ワープロを10倍速く打てる人などあまり聞きません。しかしビジョンの優越ややる気にさせる力の差は、マイナス100からプラス1万まで、途方もない違いを事業に影響させます。

 これから人が特化していく仕事には差が出やすいのです。

 人を企業の「資源」とする言い方はどうかと思いますが、これから企業が有するものの中で、人こそ最大の差別化要因であり、競争優位に直結します。資金が集まるかどうかも人次第。土地や機械はリースできますが、事業の根幹を担う人材は社員であり、外から簡単に調達できません。

 今回の特集では、「戦略人事」と名づけ、人事部門がより戦略的視点を持つことを提唱しています。それは、人材を「管理」する思考から稀少な財産として「活かす」思考への転換です。サイバーエージェント社長の藤田晋さんは「新しい事業をつくる際は、いまいる社員の特性を考える」とお話しされています。機械による仕事の自動化が進めば進むほど、自動化できない作業を期待される人材はますます「替えが利かない」のです。(編集長・岩佐文夫)