企業が自社サイトで理念や価値観(values)を表明することには、どれほど意味があるのだろうか。INSEADとIMDの研究者らによれば、そこには業績との相関があり、無視できない意義があるという。

 

 敬意、誠実さ、コミュニケーション、卓越性――不正会計で破綻したエンロンが掲げていた価値観である。企業が自社のウェブサイトで表明している価値観にはあまり意味がない、と考える人がいるのも当然だろう。

 しかしINSEADとIMDの研究者たちは、必ずしもそうとは考えていない(英語論文)。たしかに口で言うだけなら簡単であり、価値観の表明とその実行は別物だ(論文ではエンロンの例も取り上げられている)。それでも、表明された価値観には、その企業の目指すものが本当に反映されている場合がある。企業がウェブサイトで価値観を掲げることには意味があり、エンロンのケースは例外なのかもしれない。

 先頃発表されたこの論文の結論は、「企業による価値観の表明を軽視してはならない」というものだ。価値観の表明が、財務業績に関係しているのだという。

『ヨーロピアン・マネジメント・ジャーナル』誌に掲載されたこの論文以前にも、企業サイトにおける価値観表明に関する研究はある。2013年のある論文では同様の研究がなされているが、業績との相関は見出されなかった。しかし今回、INSEADのチャールズ・ガルニック、およびIMDのカルステン・ヨンセン、ジョン・ウィークス、タニア・ブラーガは、先行した研究者たちとは異なる方法をいくつか用いている。

 第1に、各企業が掲げている価値観の内容だけでなく、その数を調べた。第2に、企業の価値観と競合他社のそれとを比較し、どの程度違っているかを検証した。第3に、企業が価値観を変えているかどうかにも着目した。長期間にわたり価値観を見直さない企業は、より機敏な競合他社に後れを取っている可能性がある、という考えによる。研究者らは、2005年のフォーチュン100社についてこれらを調べ上げ、以降3年間の各社のROA(総資産利益率)と比較した。