「感性」「面白さ」「個性の尊重」。それぞれが大切にしているもの

 最初は阿部さんの絵です。参加者からさまざまな印象が寄せられるなか、大胆なコメントを放ったのは星野さんでした。

「大切にしているものがない感じ?」

 働くうえで大切にしていることを描いたのに、大切なものがない? 会場は大爆笑に包まれます。阿部さんは、怯むことなく絵に込めた意図を語り始めました。

「私が働くうえで大切にしているのは『感性』です。私は色弱で、みんなが見ている色と自分が見ている色が違います。たとえば紅葉を見ても、きれいとは感じないのです。ただ面白いもので、みんながきれいだと言う紅葉を一緒に見に行けば、きれいだと思えるから不思議です。人間は色だけではなく、空間や場の雰囲気によって人と共感できる。そんなことを学びました。そこから、人と同じにはならなくても、自分の感性を大事にしようと思うようになったのです」

 冒頭、星野さんが語った阿部さん評がここで説得力を持ちます。

「この絵は、感じ方は人それぞれでも、無限の可能性を秘めていることを表現したものです。タイトルは『無限性』とつけました」

 大切にしているものがないのではなく、無限の可能性を大切にするからこそ放射状に足が伸びていったということだったのです。

 続く永田さんの絵に、kuniさんは「外へと伸びていく力」をイメージしたといいます。

「中心から外側へ広がっていく爆発をイメージしました。ただ、激しい爆発ではなく、ゆっくり燃焼しながら広がっていく感じですね」

 永田さんが思いを語ります。

「仕事に対する不安を波に見立てました。ところが、どこに進むのかわからない不安がありながらも、不安に思っている自分を面白がっている自分がどこかにいるんです。それをエネルギーにして、最終的に面白さに到達する。その面白さが中心部分ですが、それがさらに外に向かって拡散することで面白さは増幅する。そんなイメージを絵にしました」

 そんな永田さんが絵につけたタイトルは、kuniさんのイメージと同じ「爆発」です。さすがアーティストならではなのか。会場からは拍手が湧き起こりました。

 続いて川村さん。その絵を見て、阿部さんは「こすリングはあんまり使っていない感じですね」と指摘。参加者から笑いを取ったあと、本題に入ります。

「連続している感じとか、らせんの道の中にすべて収まっている感じなど、前後の連鎖や仲間とのつながり、協調性を大事にしていると強く感じました」

 阿部さんの意見に対し、川村さんはこんな言葉で応えます。

「星野リゾートの社員は、私から見ると豊かすぎるほど個性が豊かで、私自身としては戸惑うことばかりです。でもその個性を尊重しつつ、みんなで上昇していきたいという思いが強くあるので、それを表現してみました」

「はじめは、らせんの太いほうを右下にして描いていたんですが、逆に太いほうを左上に持ってきたほうが上昇の勢いが出て楽しくなると思ったので、変えてみました。絵のタイトルは『パワーストリーム』です」

 そして、しんがりに登場したのが星野さんの絵です。参加者からは「疾走感」「残像」などといったイメージが出されました。星野さんはどのような絵を描いたのか。白い物体は何を表しているのか。そこには、どのような思いが込められていたのか―。詳細はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー12月号に掲載されていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。