5年後、10年後、何が残るのか、何が書き換えられるのか

 弊誌ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は、ハーバード大学の雑誌であり、1922年にボストンで生まれました。日本の大正時代ですが、当時のアメリカは第一次大戦後の特需でニューヨークが世界の金融の中心となります。またデュポンやGMという巨大企業が誕生した時代です。大企業の誕生は新しい経営システムを必要とし、ここでマネジメントの進化が始まります。GMのトップだったアルフレッド・スローンは、事業部制を開発したことで巨大組織をひとつにまとめることを成功させました。まさにマネジメントの進化は東海岸を中心に栄え、ハーバード・ビジネス・スクールとともにHBRも最新鋭の経営理論を紹介するメディアとして育ちました。

 それから100年近くが経とうとしているいま、新しいビジネスやサービスの発祥地は西海岸、すなわちシリコンバレーに移りつつあります。最先端の技術やサービスの誕生が、さらに最先端の人を集める。そして、それらの人の中から新しい経験やナレッジが生まれる。もはや西海岸が生み出しているのは、新しい技術やサービスのみならず、新しいマネジメント手法やビジネスマインドにまで及んでいるのかもしれない。

 『ワーク・ルールズ!』でグーグルの人事担当上級副社長であるラブロ・ボックは、「自分より優秀な人を採用する」と断言します。『ALLIANCE』の著者である、リンクトイン創業者のリード・ホフマンは、契約より信頼をベースにおく「アライアンス」という雇用形態を提唱しています。これらは明らかに、新しい産業を生み出すシリコンバレーならではの発想です。かつてGMが生み出した事業部制が、世界中で書き換えられながらもいまに受け継がれているように、今後これらは新しい経営の常識として定着するのでしょうか。

 今年、上位にランクインした本に書かれていることで、5年後、10年後、何が残り、何が書き換えられていくのか。いまから楽しみです。(編集長・岩佐文夫)