あなたが思考の転換に取り組むならば、他にいくつか留意すべき点を以下に挙げよう。当たり前に思えるものもあるかもしれないが、新たな責務が山積しプレッシャーが増していけば、こうした基本的なことでも簡単にはいかない。

 ●長期的・大局的な視野を持つ

 個人プレーヤーは黙々と任務の遂行に集中する。一方、マネジャーはさらに先を見越していく必要がある。

 優れたマネジャーが多くの時間を費やすのは、来る課題を予測すること、話し合いで政治的な状況に折り合いを付けること、そして、チームメンバー個々の仕事をまとめるためのロードマップを描くことだ。また理想的なシナリオにとらわれずに考え、偶発事象への対応策を立てておかねばならない。

 大局的な視点を持つには、2つのことをうまくやる必要がある。

 第1に、自分の部署および会社全体のニーズと目標をしっかり把握しよう。チームを取り巻く生態系について明確に理解すれば、あなた自身の上司の期待を予測しやすくなる。第2に、個々のチームメンバーの能力を理解しよう。チームのキャパシティを把握しておけば、どんな状況がチームにとって限界あるいは障害となるのかをより的確に予想でき、それに応じた要求ができるようになる。

 ●より頻繁に質問する

 チームメンバーの誰かが悪戦苦闘している時、つい答えを与えたくなる(あるいはジュリーのように、その仕事をみずから片付けたくなる)こともあるだろう。結局のところ、あなたはどうすべきかわかっているはずだし、解決策をすぐに与えれば、その分早く仕事に戻れるのだから。

 だが「自動解決機」になることが習慣化すれば、部下に自分の頭で解決策を考え出すチャンスを与えないことになる。

 問いを投げかけることは、問題に取り組む部下を助ける素晴らしい方法になりうる。何が問題の種になっているのかを挙げてもらい(ホワイトボードに書かせてもよい)、それについてあらゆる角度から説明させよう。多くの場合、問題を詳しく説明するという行為だけで、解決策が見えてくるものだ。

 しかし、そうでない場合は、あなたが質問することで、部下は障害を新しい視点で見つめやすくなったり、別の可能性に思い当たったりするだろう。

 ●Howではなく、WhatとWhenを重視する

 個人プレーヤーだった頃は、仕事のやり方を極めることが報われた。より生産的になる方法や、どうすれば最高の仕事ができるかについて、あなたには素晴らしいアイデアがあるかもしれない。

 だが自分にとって役に立つ方法でも、他の人には役立たない場合もある。また、あなたがいままで考えたこともなかった新しいアイデアや方法を思いつく人がいるかもしれない。チームの目標を設定する時には、成すべきことは何か、そしていつ完成する必要があるかを重視すべきだが、その方法についての詳細は各自に任せるのが常に最善である。

 ただし、当然ながら例外もある。部下が助けを求めている時、あるいは苦しんでいるメンバーにあなたが気づいた時だ。その時点で、タスクがどんな方法で進められているかをチェックすべきである。ただその場合にも、自身の思い込みにとらわれずに状況を見る必要があり、何をすべきか単に指図するだけであってはならない。

 プロセスではなく目標達成を重視すべきもう1つの理由は、マイクロマネジメントを避けるためだ。上司に肩越しに覗かれ、仕事の仕方をとやかく言われて喜ぶ部下はいない。過剰管理はチームをすぐにイライラさせることになり、仕事を早めることには絶対にならないだろう。