日本企業の経営者のIoTに対する
意識は保守的?
 アクセンチュアでは、経営環境に関する経営層の認識を調査するため、毎年「グローバルCEO調査」を行っている。
 2015年はイギリスの経済専門誌『エコノミスト』の調査部門と共同で、先進国から新興国まで合わせて1405名の経営層にアンケートを実施した。調査のテーマは「グローバル経済環境の見通し」から「デジタル化がビジネスを遂行するうえで果たす役割」まで、多岐にわたっている。
 調査の結果、グローバル企業の経営者と日本企業の経営者の間に顕著な差が出た。たとえば「今後12ヵ月で競合企業が現在の市場環境を一変させるような製品・サービスを打ち出すと考えているか」という質問では、グローバルの62%が「はい」と答える一方、日本企業で「はい」と答えたのは16%にすぎなかった。この結果から、グローバル企業の7割近くがビジネスモデルの変化や市場を一変させる新製品・サービスの投入が不可欠だと考える一方で、日本企業はそうした事業機会や脅威に気づいていないことがわかる。
 同様に「IoTはオペレーションの効率化や生産性向上と、新たな収益源の創出のどちらにより貢献すると考えていますか」という質問に対し、グローバルの57%が「新たな収益源の創出」と答えたが、日本企業は正反対の結果が出た。「オペレーションの効率化/生産性向上」と答えた経営者が68%を占め、「新たな収益源の創出」と答えた経営者は、グローバル企業のほぼ半数に留まったのだ(図2「IoTがもたらす期待効果」参照)。
 日本企業の経営者は、IoTは効率化やコスト削減をもたらす「改善」要因と見なしている傾向がうかがえる。一方のグローバルでは、IoTを新たな事業成長の機会ととらえている。日本企業とグローバルとの間には、非常に大きな意識の差があることがわかる。
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図表2 IoTがもたらす期待効果 世界各国の経営者の約60%がIoTが新たな収益源の創出に貢献すると考える一方、日本企業の経営者の大半はオペレーションの効率化や生産性向上のツールとしてとらえている。
出所:グローバルCEO調査2015、アクセンチュア分析
 
構成:新田匡央 写真:鈴木愛子(清水新氏)、引地信彦(石川雅崇氏)