1社で実現しない問題解決ができる
「エコシステム」
そして、最後がエコシステム(ビジネス生態系)である。これまでのエコシステムは系列に代表されるように安定した品質の製品を安定した量だけ生産するためのものであった。しかし、これからは新しい顧客体験、新しい成果を売るためのエコシステムが必要となる。いままで自社がいた事業ドメインだけで物事を考えるのではなく、そこに集まる顧客を中心に考え、どのような顧客体験を提供できるのかを見出すことが重要になる。
ただし顧客の要望を満たすには、自社がすぐにできないことも多い。自分たちが得意な領域もあれば、不得意な領域もあるのだ。自社だけで実現できない、あるいは時間がかかる領域であれば、得意とする他社と組めばいい。そうすれば自然と顧客の体験を豊かにするプラットフォームが組み上がり、サービス型のビジネスに変えられる。これがエコシステムである。
自社が持っていないケイパビリティを補完するための手段は、バイ(買収)、ビルド(自社開発)、ボロウ(連携)の3つである。自社開発は時間がかかり、M&A(バイ)には事業以外のさまざまな問題もクリアする必要がある。ここで積極的にアライアンスを組む(ボロウ)ことが重要になってくる。言い換えれば、自社単独で顧客の課題を解決できる要素は少なく、さまざまな得意なものを持つ企業とエコシステムを築くことで、顧客の抱える問題をトータルに解消する時代である。
問われるのは自社の存在、
自社の意思
事業の定義が「モノを売る」から、「成果を売る」に変換することで、業界の境界線はおのずと変貌する。この3つのケイパビリティは、業界や従来の競争のルールが変わった世界での競争優位の源泉でもある。
顧客の成果を出すために企業は何をすべきか。得意な領域を活かすために、自社がフロントに出るのではなく、プラットフォームに徹するのが得策かもしれない。自社の技術を広く異業種の他社に使ってもらうのが最適かもしれない。ビジネスモデルも多層的に変化する世界では、企業は、自分たちが何者なのかを知る必要がある。自分たちは何で生きてきたのか。そして、これから何で生きていくのか。これは自社の定義を事業ドメインや技術領域で定義することではなく、自社の意思を根幹にビジネスを再構築することになる。自分たちが何者であるかによって顧客を理解する方向性は変わり、どのようなエコシステムを組めばいいかという方向性も変わるからだ。
現在のプレーヤーでシェアを分け合う市場は、新陳代謝が起こり登場するプレーヤーが変わるとともに、従来の事業ドメインの定義すら変わる。新しい事業の柱を見つけるためにも、自分が何者かを再定義していかなければならない。その時、デジタル化、IoTが大きなドライバーになり、大きなチャンスにもなるはずだ。