米国におけるアクティビスト(物言う投資家)の影響を、定量調査した論文を紹介。企業の収益性には貢献する反面、その恩恵は従業員の待遇に反映されていないことが示された。
米国の金融についての見解には2種類ある。1つ目は、金融セクターは資源を最適活用できる人々と企業の手に資本を移すことで、経済全体のパイを大きくするのに役立っている、という説。2つ目は、ウォール街は価値を生み出すどころか奪っている、とするものだ。経済学者のタイラー・コーエンはかつて、それを次のように表現した。「大手銀行は社会という現金入れに穴を空けて、そこからストローで吸い取っているようなものだ」
近々発表される予定のアクティビスト・ヘッジファンドに関する研究に示されるように、どちらの言い分にもある程度の真実が含まれている。そしてこの見解の対立こそが、米国における格差の広がりを説明する一助となる。
アクティビスト投資家は企業の株をただ買うだけでなく、一般的には取締役会のポストを獲得して、その意思決定に影響を及ぼそうとする。初期のアクティビストは年金基金だったが、1990年代からはいくつかのヘッジファンドがその戦略を採用するようになった。以降、アクティビスト・ヘッジファンドのターゲットとなる企業の数は劇的に増加し、2013年には200を超えた。
最近ではイーベイが好例である。2015年夏にアクティビストのカール・アイカーンの圧力を受けて、ペイパルを分社化した。2つを別会社にしたほうが利益が上がると信じるアイカーンは、分割に反対する取締役のマーク・アンドリーセンたちを相手に公の場で論争を繰り広げた。最終的にはアイカーンが望みをかなえ、アンドリーセンは取締役の座を退いた。
いまや経営者と取締役会は、自社のコントロールを維持するためにアクティビスト投資家を出し抜こうと努めている。また批評家たちは、アクティビスト・ヘッジファンドが経済活動における短期的な思考を助長すると主張している。