一時的な販促による取引増加ではなく、顧客の持続的な忠誠心を得るためにブランドは何をすべきか。顧客と分かち合う「共通の意義(shared purpose)」を見出し、貢献した顧客に「感謝を示す」ことであるという。
ブランドを持つ企業は忠実な顧客を求めている。彼らは購入頻度も高く、支払額も多いうえ、他者にそのブランドを広めてくれる。だがデロイトの調査によれば、米国ではナショナルブランドに対するロイヤルティは下降傾向にあるという(英語サイト)。消費者は、かつてよりも多くのブランドを比較検討し、提供企業をますます頻繁に乗り換えるようになっている。
マーケターは、ロイヤルティ・プログラムによって顧客からより多くの信頼、コミットメント、推奨(アドボカシー)を勝ち取るために何ができるだろうか。その答えは、懸賞、クーポン、ポイント、セール、eメールを多用することではない。デジタル時代におけるロイヤルティの真の意味を、再考する必要がある。
1.ロイヤルティとは互恵的なものであるべき
今日の消費者は、ブランドにまつわる忠誠心が双方向であることを期待している。マーケターを支援するソフトウェア会社のカイトウィールによる調査によると、消費者の4分の3は「ロイヤルティ・プログラムとは、ブランドが消費者に対するロイヤルティを示すものだ」と信じているという。一方で、マーケターの3分の2はその逆、つまり「ロイヤルティ・プログラムとは、消費者がブランドに対するロイヤルティを示す1つの方法だ」と思っているのだ(英語サイト)。
この認識の乖離は、ブランドがロイヤルティについて語るときに象徴的に表れている。たとえば「ブランド・ロイヤルティ」と「顧客ロイヤルティ」という2つの言葉は、しばしば同じ意味で使われる。
ブランドが顧客にロイヤルティを示すと、どのようなことが起こるだろうか。クレジットカード会社は、支払期日に休暇中の顧客に対して、延滞料の回収をやめるかもしれない。小売業者なら、支払額は少なくてもソーシャルメディアを積極的に利用してブランドの宣伝役を買ってくれている客に、報酬を与えるかもしれない。航空会社やホテルは、乳幼児がいたり、転職活動中で仕事がないために旅行を見合わせたりしている客に対して、状況を考慮した対応に変えるかもしれない。
2.ロイヤルティは感情が第一、行動は二の次
ほとんどのブランド企業は、ブランド・ロイヤルティをリピート購買という顧客行動で測っている。だが、この尺度は本末転倒である。ロイヤルティは感情によってもたらされるもので、リピート購買はあくまでその結果なのだから。
このような誤った認識は、セールがますます多用されている現実に表れている。値下げは取引を増やす1つの手立てかもしれないが、少なくとも感情的な意味では、必ずしもロイヤルティにつながるものではない。オールドネイビーのCMOであり、最近のブランド変革を担ったアイバン・ウィックスティードは、こう語っている。「ブランドが築く感情的なつながりこそ、最も長続きし、最も深く浸透するのです」
ブランドがアメをムチに転じて、顧客の忠実でない行動を罰し始めると、事態はさらに悪化する。アマゾンの例について考えてみよう。
同社は2015年10月、アマゾンの動画ストリーミングサービス「プライム・ビデオ」と相容れない商品(「アップルTV」とグーグルの「クロームキャスト」)の販売をやめるという声明を発表した。私はアマゾンの他の顧客と同様に、この行為が「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」という同社のミッションにどう合致するのか、疑問に思う。あるいはベライゾンやAT&Tのような、顧客をさらなる2年契約へと囲い込む方法を常に探している電話会社はどうだろうか。