流行への敏感さと、踊らされない冷静さ

 この本の序章には、ガートナーの調査として次のような結論が紹介されている。「ゲーミフィケーションの手法をとり入れた現在のアプリケーションは、2014年までに80パーセントがビジネス目標を達成できずに失敗するだろう。その主な原因はデザインの欠陥だ」。そして、この分析に対して筆者は「これは、間違った思い込みから最先端の技術をいち早くとり入れた企業がどれだけ多いかという指摘だ」と評している。

 ここ数年のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)ブームに代表されるように、日々、新たな概念が生まれ、世の中に広まっている。先日、DHBR.netに掲載した記事では、2016年には「バックドア」「ブロックチェーン」など8つのトレンドが生まれるだろうと予測されていた。もしかしたら来年は、まだ聞いたこともないような単語が世間を賑わせているかもしれない。

 いまやテクノロジーが変化する速度はいっそうの激しさを増し、そこから取り残されることがビジネス上の死活問題であることは間違いない。しかし、先端技術やコンセプトの表層だけを見て、あたかもそれが万能薬であるかのように信じ込んでしまう瞬間があるとしたら、深呼吸して冷静さを取り戻すべきではないか。バーク氏が指摘するように、その結果の多くは芳しいものではないと予想されるからだ。

 本書をきっかけに、ゲーミフィケーションの理解が進み、骨太の議論を巻き起こし、そして、企業が実践するヒントになることを期待している。