DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)の編集でいつも考えているのが、読者の期待に「沿うこと」「超えること」そして「裏切ること」である。それがDHBRという雑誌ならでは「らしさ」を維持し、そして継続する価値を生み出すことにつながると考える。
期待を満たすだけでは、飽きられる
特集テーマを決めて内容をつめる段階で、いつも意識しているのが、読者の期待に「沿うこと」「超えること」そして「裏切ること」です。
「期待に沿う」とは、このテーマであったら当然欠かせないものを外さないということです。特集タイトルを見て、「こういうことが知りたい」という読者の期待に、真正面から応えられる内容であること。ここはキャッチボールで真正面にボールを返す感覚です。「美味しい焼肉屋さんはどこですか」という問いに「ステーキと焼き肉で美味しさは違います」と答えるのは、期待に沿っていません。どれだけ特集テーマに忠実に、ストレートに応えられるかが重要です。
「期待を超える」とは、読者の想定を超えたものをつくりたいということです。読者の期待を「円」という空間で表現するなら、その空間をちゃんと埋めるのが「期待に沿う」こと。そして、その空間を埋めるだけでなくもっと大きな円を描いて読者に提示する。「美味しい焼き肉屋さんはどこですか」に対し、「タンならここ、カルビならここ」と応えたり、「どこどこです。こういう焼き方で食べるとさらに美味しいですよ」という情報まで伝えることです。ここでは相手の期待を小さく見積もらず大きく想定して、さらに「ワオ」という領域を見せることができるかにかかっています。
この「ワオ」が提示できないと、次の期待へと繋がらないと考えています。特に定期購読者が多い弊誌のような雑誌は、読者と長い付き合いをしたい。ただし「馴れ合い夫婦」のような緊張感のない関係は続かない。毎回、「ここまで深くやるか」と思っていただけるものをつくれるか否かが問われていると思っています。