それぞれの絵に秘められた思い
それほど夢中になって描いた絵。どのような思いが込められているのでしょうか。
まずは押味さんから。押味さんの絵には「疾走感」「明るい光」「パワーが出てくる」「私はアスリート」などのイメージが寄せられました。
「働くうえで大切にしていることとして思い浮かんだのは、客観性、まっさらなところから始めるという思考プロセスです。全体は四角に見えても三角や丸など曲線をメインに描いていて、これは何かと聞かれたときに三角と答える人も四角と答える人もいる。見方によって違って見えるような絵にしたいと思いました」
参加者がイメージした「疾走感」は、そのものずばりだったようです。
「何かに向かって進むということを示したかった。ただしそれは1本の道ではなく、さまざまなものが融合し、全体として前に進んでいくイメージですね」
押味さんがつけたタイトルは「Green Field」。緑はまっさらな状態の象徴。いろいろなものを色眼鏡で見ず、客観的に見るという考え方を含んでいるそうです。
高橋さんの絵に対するイメージは「信念」「チームワーク」「スポットライト」「希望でつながる世界」などが挙げられました。実際は、どんな思いがあるのでしょうか。
「すべての色を使おうと思いました。色は人やチームを表すと考えたからです」
高橋さんは色と色を混ぜ、色と色の境目を滲ませることに心を砕いたといいます。
「白い色で描いた全体のコアに向かって、人と人、チームとチームが重なり合いながら向かって行く。そんなつながりを表現したかったからです。反面、赤や青などそれぞれの色にもコアな部分があります。つまり、人やチームの個性です。その部分は極力色を混ぜないで残すことを考えました。タイトルは『つながり』です」
3人目は川野さん。ほかの人には「変化を受け止める」「ゆるやかにつながる」「ケミストリー」「カーテン」というイメージが浮かんだようです。
「働くうえで大切にしているのは『人とのつながり』です。自分のことを考えるだけではなく、常に人を受け入れる『余白』を持っておきたい。そうは言っても、優しさだけではなく拒絶することも必要な場面が出てきます。そんな両端の思いを表現するために、あえて色をつけない部分を残してあります」
川野さんは「明」というタイトルをつけました。
「絵そのものには明るいイメージはないかもしれませんが、明るさはベースとなる部分があってのこと。この絵は、そのベースを表現したものなのです」
マヨランさんの絵は「多様なものの組み合わせ」「貫くもの」「多様性」「アヒル」と見られたようです。マヨランさんは、またもジョークから始めました。
「アヒルをわかってくれたのは熊谷さんだけでしたね」
会場大爆笑、作戦成功です。
「それはともかく、普段の仕事では直線ばかり使っているので、できるだけ曲線や円を使うようにして、それらがどのように影響し合うかを見てみたいと思いました」
マヨランさんが意識したのは、別の人、別の分野、別の国などが混じり合っていくときの「境界」と、混じり合わないときの「境界」だといいます。
「直線的で人工的な境界は人間がつくるもの。その境界から侵出してはいけないのか、あるいはバイアスがかかって侵出できないのか。そんなことを考えながら描きました」
そんなマヨランさんが絵につけたタイトルは「異空間の境界」です。
最後は熊谷さんです。参加者からは「月と太陽」「育て合い」「face to face」「すごいパワー」「思いがぶつかる」というイメージが出されました。それを聞いた熊谷さんは「みんなの説明のほうがいいなあ」とボヤきます。働くうえで大切にしている「人の心」と「ポジティブ」をイメージしながら描いたと熊谷さんは言います。
「ベースにあるのは平穏な世界。そこにふとしたきっかけで小さな波が起こり、その波が大きな渦になっていきます。それぞれが膨大なエネルギーを持って回っていますが、やがてふたつの渦は融合し、成長し、ひとつの渦になっていく。ほんの些細なことからすごいことが起こってくる。そんなイメージですね。タイトルは『きっかけ』です」
熊谷さんがこの絵に込めた思いは、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー3月号にも詳しく書かれています。あわせてご覧ください。
なお当日の様子を、こちらの6分の動画でもご覧いただけます。