便利さだけではない、感動するレベルの提案へ
――人工知能は、活用するにはまだまだ不完全な部分も多いですね。
まだまだ不完全な分、むしろツールとして活用する可能性が見えたと思っています。小さな改善レベルでは、「アイテム数をもっと増やしてほしい」「金額の幅を設定したい」といった希望が販売員から出ています。瞬時に条件を設定して、アイテムを絞りこむ機能は、より精度を上げると販売に役立ちますね。
さらに、シーンに応じた提案機能がほしいと言う声は強くあります。お客様が百貨店にいらっしゃる時は、おぼろげながら何かイメージを持っていらっしゃることが多いです。
――よそ行きの洋服が欲しいとか、仕事で使いたいとか…。
点としての答えを持っていらっしゃらないまでも、たとえば「来週旅行がある」とか「入卒式がある」とか、あるいは「ちょっと春めいてきたので明るい色の何かがあったらいいかな」など、おぼろげながらのスタート地点があります。
何となくのニーズを点に変えて捉えていくことは、おそらく人工知能が得意なところだと思います。たとえばこんなシーン、こんなシーンと、希望に沿うシーンを想定しながら、アイテムを絞りこみ、お客様にご提案できるようにしたいと思います。
――今回は30代~40代女性がターゲットでしたが、今後より層を広げたいなど、展望はありますか。
ターゲットを広げるよりも絞り込んで、もっと提案の幅を広げたいなという思いはあります。
ファッションだけに限らず、食やリビングなどジャンルを横断して、一人の方に多角的な提案をしたいと思っています。たとえば、ホームパーティに出かけるファッションを選んでいる時に、素敵なお持たせの提案も一緒に出てくるようになるのは理想ですね。百貨店全体を楽しんでいただけますし、われわれにしか提供できない買い物体験だと思います。
いまは服だけの提案に留まっていますが、まだまだ完成形ではなく、技術的な問題も、それを使いこなす側の問題もあります。
まだ始まったばかりなので、いままでできなかったことが、これからどんどん可能になるでしょう。お客様に「便利」だと感じてもらうのが第一歩です。その先の「感動」のレベルまで行くかどうかは、販売のスキルなど、人にもかかっているなとも思います。「圧倒的に便利なので使ってください」というようなフェーズを目指さなければ、お客様に満足してもらうことは難しいのではないでしょうか。