リーダーが新たな視点や気づきを得るためには、自己を振り返る「内省」が必要だ。経営学教授でアーティストでもあるナンシー・アドラーが、日記帳を使って内なる自分と対話する3つの方法を伝授する。


 諸研究でも示されているが、優れたリーダーには内省の時間を持つ習慣がある。独自の観点を見出し、それを日々の意思決定と意味づけ(センスメーキング)に活かせるかが、彼らの成功を左右する。

 傑出したリーダーシップは、他者よりも早く発見し、理解し、行動する能力の上に成り立つ。リーダーとして独自の観点を持つことは、創造性と競争優位の大いなる源泉だ。しかし現実には、ほとんどの人は目まぐるしく忙殺される生活に追われ、自分の内なる声に耳を傾ける時間などなかなか持てない。

 自分の中の気づきに触れるのは、なにも難しいことではない。毎日、振り返りの時間をしっかり取るだけでよいのだ。私がお勧めするのは、規則的に日記をつけるというシンプルな行為だ。これは、さまざまな研究成果(私自身のものも含む)に加え、コンサルタントおよび国際経営学教授としてグローバル・ビジネスリーダーたちに接してきた私の、長年の経験に基づくものである。

1.日記帳を買う
 オンラインで書いても、手で書くような効果は得られない。だから本物の日記帳を買おう。私が特にリーダー向けにつくったLeadership Insightというノートには、空白のページ、絵画、内省のきっかけとなる質問が含まれている。しかし、どんな日記帳でもかまわない。

2.1日15分間、内省の時間を確保する
 これが最も難しいところだろう。15分が無理なら、初めは3分でもかまわない。とにかく始めることが必要だ。

3.邪魔の入らない静かな場所を見つける

4.適切な時間を選ぶ
 邪魔されない、できれば毎日同じ時間帯がよい。都合に合わせて好きに選べばよいが、この15分間は、自分だけと向きあう時間としてしっかり確保しなくてはならない。

5.心に浮かぶことを何でも書く
 日記帳の空白のページは、自分自身との正直な対話を日々促してくれる。日記ならどんなことでも言える。そのためいちいち評価や自己検閲をせず、思考の方向もコントロールしないで、ただ意識のおもむくままに書けばよい。私の場合は、特に調子のよい時には、自分の手を上から見ているだけで、ひとりでにペンが動くような感覚を覚える。また、文法などは気にすることはない。ただ自分自身をそのまま表現するのだ。

6.日記は誰にも見せない
 内省は自分のためにすることで、他の誰かのためではない。みずからを振り返ることで、世界中のあらゆる専門家、アドバイザー、エグゼクティブコーチの助言を足し合わせても得られない何か、つまり自分独自のものの見方が得られる。

 空白のページを前に、どうしていいか途方に暮れるという人は、以下を参考にしてみよう。