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交渉の成果を左右する
4つの要因
交渉の場でつまずかないための助言を与える書籍や記事は数え切れない。しかし、ひときわ手痛い間違いは、時として、取引内容を話し合う席に着く前の段階で起こる。その原因は、交渉に対する先入観──一見すると合理的だが、突き詰めると不完全な憶測にある。人はえてして「交渉の席で多くの価値を提示して影響力を十分に発揮すれば、確実に実り多い取引をまとめられる」と思い込んでしまう。それらはたしかに重要だが、交渉の行方に影響を及ぼす要素は他にもたくさんある。
本稿では、数百万ドル、時には数十億ドル規模の取引について、多数の企業に助言を与えてきた筆者の経験を踏まえ、交渉の成果を大きく左右する4つの要素を紹介する。いずれの要素においても、交渉者の一方が条件や対案を提示する前に、何をなすべきかについて指針を示す。
[1]取引内容の前にプロセスについて交渉する
数年前、ハイテクベンチャー企業の共同創業者2人がフォーチュン100社のある企業のCEOとの会合に臨んだ。そのCEOは2人のベンチャー企業に1000万ドルを出資することで同意していた。1週間前に出資額と評価額の議論を尽くし決着がついていたので、この日の会議は祝賀ムード一色となるはずだった。ところが、会議室に足を踏み入れた共同創業者たちは、弁護士や銀行員の一団を目にして驚いた。CEOも同席していたが、積極的に話し合いに加わるつもりがないことはすぐに明らかになった。