商品管理から
カスタマージャーニーの管理へ

 過去10年のデジタルテクノロジーの飛躍的な進歩を背景に、消費者は自分の支配下にあるツールや情報を使いこなす「権限を得る(エンパワード)」ようになった。彼らは自分がほしいものをほしい時に探し出し、とことん安く購入して玄関先まで届けさせる。

 これに対し小売業者やサービスプロバイダーは、顧客を理解して支配権を取り戻そうと、ビッグデータやアナリティクスの能力の開発を急いできた。その大半の期間で企業が取り組んできたのは、顧客の動きに反応し、次の行動を予測して、検討から購入へと続く買い物客の旅(ジャーニー)の道沿いに自社を位置づけることである。

 そして現在、企業は新たなテクノロジー、プロセス、組織体制を駆使してパワーバランスを回復させ、自社ブランドと購入者の両方に価値を生み出している。この変化の背景にはある発想の転換があった。つまり消費者が考え出した旅路に対応するだけでなく企業側が道筋をつくり、消費者に追従するのではなく、先導するということである。