人の行動データが取得できるようになり、デジタルマーケティングは一気に広まった。今後もその用途は増え続けると思われるが、多くの課題もある。この課題をいかに乗り越えていくか。

 

人の行動データが取れるようになった意味

 書籍や雑誌の編集者なら誰しも経験があると思うのですが、自分のつくった本や雑誌が発売されると、アマゾンから「この本を買いませんか」と推奨メールが来ます。その度に「これは僕が作った本だ!」とメールに突っ込みを入れます。元をただせば、その本をつくるために関連した本をアマゾンで購入した履歴が残っているからアルゴリズムがそう判断するのです。

 購買行動のデータが取れるようになったいま、デジタルマーケティングの可能性はますます広がってきました。

最新号では、このデジタルマーケティングを特集しましたが、編集しながら考えたのは、その可能性と限界です。アマゾンのような購買データの活用は、コンビニもPOSデータの活用として従来も売れ筋管理に使ってきました。それがよりパーソナルな情報として管理できること、さらに言えば、今後は、GPSやIoTの技術を活用することで、購買のみならず、生活者の多くの行動データが取れることになります。コンビニで缶コーヒーを買う前に、どの商品を棚にとって戻したか。自動販売機を前に、ボタンを押す前にどのボタンを押そうかと迷ったか。さらに言えば、お店に入って、どのような行動をして何も買わなかったか。これら膨大な行動データの集積から、一人ひとりの詳細な好みや趣向性が明らかになります。

 冒頭で書いたアマゾンのリコメンドシステムは、メールに突っ込みを入れながらも、きちんと問題意識の関連した書籍が紐づけられている証拠でもあり、高い確率でこの情報が必要な人にメールが届いている可能性も感じます。

 また今後、自分の無意識な行動をアルゴリズムが分析して、自分にぴったりの商品やサービスを提案してくれるとすれば、それは素晴らしい世界を予感させます。