その一方で、課題はまだまだあります。メルマガのコンバージョン率が2%から4%に2倍になったとします。従来のDMでは4%という反応率は驚異的で、しかもコストも劇的に低い。これはマーケティングのコストとしても相当インパクトがあるでしょう。とはいえ、依然として96%のユーザーに迷惑なメールを送っている可能性も無視できません。情報の提供コストが安くなったからと言って、むしろその結果、ユーザーの元には、膨大な不必要な情報が届いている現実があります。

 このように課題はまだまだ山積みなのです。

 それでもなおデジタルを利用しない手はありません。人がやるよりも、圧倒的に低いコストとスピードで、多くの判断や実行を可能にするのです。一人ひとりにあったメールを、人の手でやるには、相当の単価の商品と反応率を期待するしかないのです。

消費者を理解するのは、
人と機械のどちらが得意か

 マーケティングの基本は消費者を理解することです。この「人を理解する」という行為は、果たして人間と機械のどちらが得意なのでしょうか。この問いは、人工知能に代表される機械が、人間の認知活動を担うようになってきたからこそ切実になりました。

 しかし、機械は人間が生み出したものです。そもそも人間は言葉を生み出して、そして無数の語彙を作り出し、人と人が理解し合えるツールを開発してきました。人を理解するために、アルゴリズムを進化させている。これがいま起こっている現実です。人と機械のどちらが得意かという問いよりも、人がどこまで機械をつかって人を理解できるか、という問いに変換することがより創造的だと考えます。

 デジタルマーケティングの限界はアルゴリズムの限界です。いま現在、どこまでアルゴリズムが、消費者を知るという機能を満たすだけの能力を備えているのか。そして、その限界を打破するのもアルゴリズムを高度化させる人間です。そのためにこそ、マーケターはより深く消費者を理解する努力を続けていく必要があります。デジタルマーケティングの可能性を広げるのも、マーケターの「人を理解する」真摯な姿勢なのだと思います。(編集長・岩佐文夫)