メールに関する諸研究によれば、メールを廃止または制限することで、個人の生産性を飛躍的に高め、ストレスを大幅に減らせることがわかっている。

 カリフォルニア大学アーバイン校と米陸軍による共同研究では、民間企業の従業員13人を対象として、メールの使用停止が生産性とストレスにどう影響するかを測定した(英語論文)。最初の3日間は基準値の計測期間として、実験参加者をインタビューし、目視とコンピュータのモニタリングソフトで観察した(参加者がどのプログラムを、どの頻度で使用し、仕事がどの程度遮られるかを調べた)。さらに、ストレスレベルの代理変数として、心拍数も測定した。

 その後、参加者のメールプログラムにフィルタをインストールして、メールを徹底的に遮断。すべての受信メールを後日読むように隔離し、通知が一切生じないようにした。

“メールなし”状態は5日間続き、この間にも、参加者への観察、コンピュータ使用状況の追跡、心拍数の測定は続いた。すると彼らは以前よりも頻繁に、対面や電話でのやり取りを行い始めた。また、ほとんどの参加者は、使用中のPCのプログラムにいっそう多くの時間を費やすようになった。これは、気を取られる頻度が大幅に減ったことの証である。

 心拍数を見ると、メールから遮断されることでストレスが劇的に低下していた。この効果は参加者自身にも自覚されている。彼らは一貫して、通常の作業環境にいる時よりも「リラックスできて、集中力と生産性が増したことを実感した」と報告したのだ。

 さらなる実験によって、次のことも示された。1日にメールをチェックする回数を制限する、あるいはチェックを特定の時間帯に限定するだけで、ほぼ同様に劇的な効果が得られるのだ。

 アトスの事例とこれらの研究結果を考え合わせれば、私たちはメールをいつ、どのように使うべきかを話し合う必要がありそうだ。

 受信トレイを空にすれば、大いに生産的なことをしたように感じられる。しかしながら、職務内容が「メール処理」のみでない限り、その達成感は思い違いにすぎないのだ。


HBR.org原文:Some Companies Are Banning Email and Getting More Done June 08, 2016.

■こちらの記事もおすすめします
なぜ、手書きのメモはノートPCに勝るのか
仕事の生産性と質を高めるために「完了バイアス」を利用せよ