人の脳は、目の前の仕事を完了することで生じるドーパミンを欲する。本記事では、この「完了バイアス」による悪影響を避け、仕事の向上につなげる方法を紹介する。


「私は2種類の問題を抱えている。至急のものと重要なものだ。至急のものは重要ではなく、重要なものは決して至急ではない」
――ドワイト・D・アイゼンハワー

 これはアイゼンハワー大統領に限った話ではない。人は仕事をするうえで、早急な対応を要するタスクと重要なタスクとの間で常に揺れている。後者は、長期的な目標の達成に近づくためのものだ。

 しかし残念と言うべきか、我々や他の人々の研究によれば、人間には後者を犠牲にして前者(重要でないメールへの返信など)に過度に集中するという、生来の傾向があることがわかっている。

 その主な一因は、人間の脳は何かを完了すること、およびそれがもたらす喜びを求めるようにできているからだ。我々はこの傾向を「完了バイアス(completion bias)」と呼んでいる。たとえば、メールへの返信やツイッターへの投稿などの単純なタスクは、さほど時間がかからず、To Doリストの項目で「済み」にできる。

 いま我々が取り組んでいる研究(未発表)によると、To Doリストの項目を消すことは心理的な満足感をもたらす。タスクの完了後、実際にリストに「済み」のチェック印をつける行為によって、チェックするリストがない場合よりも幸福感が高まるのだ。

 この問題をさらに複雑にする要因がある。重要ではない目先のタスクを終わらせると、より困難かつ重要なタスクに取り組む能力が高まるのだ。目標を達成すると脳からドーパミンが放出される。ドーパミンには注意力、記憶力、モチベーションを高める作用があり、たとえ些細な目標でも達成すると正のフィードバックループが形成される。その結果、これからも頑張ろうというモチベーションがさらに上がるというわけだ。