我々は研究の一環で、さまざまな業界の従業員500人あまりを対象に、次の実験を実施した。1日のはじめの数分間を使って、その日のうちに達成したいタスクを書き出し、その後は書いた順番どおりにタスクを終えていってもらう。3分の2の被験者には、タスクが終わるごとにその項目をチェックしてもらう。さらに同じグループの半数には、すぐにできるが重要でないタスク(至急のメールに返信するなど)をリストの先頭に列挙してもらう。こうして全被験者が、2週間にわたり業務を記録した。

 結果はこうなった。

 最初に簡単なタスクをいくつかこなした後、他のタスクを終わらせるたびにリストに完了のチェックを入れたグループは、仕事に対する満足感と意欲が最も高かったのだ。そして記録を見ると、1週間を通してのタスク達成量も最大だったのである。最初にいくつかのタスクを素早く終わらせたことで、残りの仕事への余力が高まったと思われる。

 加えて、小さなタスクを完了すると、他の活動に取り組むのに必要な認知資源が解放され、確保される。実際に研究では、タスクが未完だとそのことで頭がいっぱいになることが示されている。手をつけたのに完了できていない仕事を忘れられないため、他のタスクに全神経を注ぐのが困難になるようだ。

 心理学者ブルーマ・ツァイガルニクは、1927年に行った実験で、成人の被験者たちにビーズを糸に通したりパズルを解いたりする単純なタスクを与えた。ある時は途中で作業を邪魔して完了できなくし、またある時は完了を促した。その後、ツァイガルニクが被験者にどの作業を覚えているかを尋ねたところ、完了できなかったタスクのほうを2倍多く覚えていたという(人は邪魔された事柄への印象や記憶を強くするという、ツァイガルニク効果)。

 心理学者E・J・マージカンポとロイ・F・バウマイスターは、2011年にこんな実験結果を得ている(英語論文)。被験者らにブレーンストーミングのタスクを与えるが、その前に体と頭を使うウォームアップ作業をしてもらった。するとウォームアップを完了できなかったグループは、ブレストの成果が低かった。ウォームアップ作業を脳内のTo Doリストで「済み」にできなかったせいで、その存在が後の作業の妨げとなったのである。