AIにクリエーティブな仕事ができるか

1976年、東京都生まれ。青山学院大学理工学部を卒業後、ベンチャーセーフネット(現・VSN)に入社。2003年、事業部長としてIT事業部を立ち上げる。常務取締役、専務取締役を経て、2010年3月、VSNの代表取締役社長&CEOに就任。2012年、同社がアデコグループに入り、日本法人の取締役に就任。2014年には現職に就任。VSN代表取締役社長&CEOを兼任している。
川崎:これからも生き残るのは、相手と交流し、理解し、意思疎通を図るといったスキルを要する仕事だとおっしゃっています。しかし、ロボットのコミュニケーションスキルも圧倒的な進化を遂げています。いつかはこうした「人間の領域」も置き換わってしまいませんか。
オズボーン:いずれそうなるとは思いますが……。20年先なのか100年先なのか、広範囲の分析が必要になり、いつ頃という予測は困難です。人間のコミュニケーションでも一般的なものは、アルゴリズムもそこまで複雑になりませんから、現在のテクノロジーでも多少のインタラクション(相互作用)は実現可能となっています。しかし、くだけた会話や曖昧な表現などは、高度なアルゴリズムが求められますので、現在のAIのテクノロジーではまだまだ「コミュニケーションができる」というレベルではありません。また、交渉や説得、文化に対する理解、解釈、説明など、人間でもかなりのスキルが要求される領域は、アルゴリズムでタッチすることはなかなか難しいでしょう。
川崎:クリエーティブな仕事も残る・発展する仕事とされていますね。しかし、最近では音楽プロデューサーの仕事をAIが肩代わりし、実際にヒット曲を生み出したといった話が聞かれます。
オズボーン:先ほどのジャーナリストの話でもそうですが、クリエーティブと位置付けられる職種も、部分的にはAIに置き換わることもあるでしょう。ただ、絵画や歌といったものを評価するには文化的な価値観を背景に、「終わりのない答え」を探しているということをAIが理解しなければいけません。
川崎:そもそも「評価すること=クリエーティブ」ではありませんからね。ヒットするかどうかの判断の確率は高められても、新しい何かを生み出すのは難しいかもしれません。
オズボーン:私もそう思います。アルゴリズムが歌を作ろうとしても、狭い領域で定義されたものでしかありません。誰も出合ったことのないような新しい歌を作るといったことはAIには難しいと思います。仮にできたとしても、それはアルゴリズムのデザイナーがその才能を持っていて、AIにその通りに作るように教えたからでしょう(笑)。
川崎:今後、AIが進化を遂げると、人間が教えなくてもアルゴリズムが自ら次のアルゴリズムを生み出すという連鎖が生まれると言うことも考えられるのでしょうか。
オズボーン:私たち人間が何かを生み出すとき、あらゆる「エリア」からアイデアを掛け合わせます。しかし、それは生み出した人間すら意識していない影響であって、その因果関係をアルゴリズムが自ら学び、処理するためには、デザイナーが意図的に作るアルゴリズムから大きく対象を外に広げ、あらゆるデータセットとのリンクを見つけなければなりません。それは今後を見通しても極めて困難だと思います。