人材サービス会社による
AIの使い方

川崎健一郎(Kenichiro Kawasaki)
1976年、東京都生まれ。青山学院大学理工学部を卒業後、ベンチャーセーフネット(現・VSN)に入社。2003年、事業部長としてIT事業部を立ち上げる。常務取締役、専務取締役を経て、2010年3月、VSNの代表取締役社長&CEOに就任。2012年、同社がアデコグループに入り、日本法人の取締役に就任。2014年には現職に就任。VSN代表取締役社長&CEOを兼任している。

川崎:日本は世界でもいち早く超高齢社会に突入し、さらに少子化にも歯止めがかからない状況です。生産年齢人口の減少が大きな社会課題となり、女性や高齢者、障がい者を労働市場に呼び込むことでこの問題を乗り越えようとしています。しかし、オズボーンさんが言うように、大部分の仕事がAIで代替えできるのであれば、こうしたことも労働力不足への対策としては必須ではないという見方もできませんか。

オズボーン:テクノロジーの進化と問題の進行に時間的なずれが生じる以上、テクノロジー以外の解決策が必要です。例えば高齢者向けの介護ロボットの進化もまだまだ部分的ですし、「ケア」は感情を理解するという情緒的な判断も必要な分野です。そうした分野ではまだ、多くの人々がその労働に従事しなければならないでしょう。

川崎:人口減少は日本だけではなく、多くの先進国とも共通する課題です。テクノロジーに期待される点は大きいですが、それをただ待つのではなく、人間による解決を並行して進めていくべきということですね。

オズボーン:はい。そういう意味では刻々と変化していく仕事に対して、働き手と柔軟なマッチングを担う人材サービスに求められる役割も大きいと思いますが、そうしたニーズは具体化しつつありますか。

川崎:中小規模の企業では、労働力をいかに確保するかという点は大きな問題意識となっていて、具体的な相談も受けています。解決策としては働き手の多様なニーズを吸収して幅広く人材を紹介するということになりますが、不確実性が高い中では、全ての企業がそれを受容できるとは限りません。人材サービス会社に求められるマッチングの精度は以前よりも高まっていると感じています。

オズボーン:人材サービス会社がテクノロジーを駆使することの必要性も高まっていると思います。すでに部分的に試みている企業もあると思いますが、スタッフのモニタリングにAIを活用することによって、最適なパフォーマンスを実現するなどです。全ての企業とスタッフの組み合わせを、人材サービス会社のコンサルタントが定量的に、あるいは定性的に把握、評価することは難しいと思いますが、AIならより間近で把握することができます。パフォーマンスと仕事をAIが精査すると、企業から見たらどれだけ効率的に、スタッフから見ればどれだけ快適に仕事しているかなどが分かってくるでしょう。

川崎:確かにそのニーズはありますね。企業の評価、スタッフの属性や志向性、職務経歴などを分析するとベストの組み合わせを実現できる可能性は高まりますが、それを人材サービス会社のコンサルタントが個々に分析するには限界があります。個人情報の問題があり、評価に関してはなんらかのルールが必要となると思いますが、可能性を感じるアイデアですね。

オズボーン:エキサイティングなことは、ベストなスタッフが、ベストポジションに配置されるという働き方のシステム変革を人材サービス会社が実現するという点です。データサイエンスを駆使すれば、絶え間なくベストな働き方を追求するシステムが実現するでしょう。