リーダー人材の不足が日本企業の成長を阻害

 日本企業は人材育成に熱心だといわれる。たしかに、充実した新入社員研修や資格取得の支援プログラムなど、手厚い人材育成制度を持つ企業は多い。しかし、その中で育てられているのは、どのような人材なのだろうか。

 管理能力に優れた優秀な管理職、責任感が強く「できるまで頑張る」忠誠心の高い社員、専門知識に秀でた技術者、誰にも真似のできない職人技を誇る匠──こうした人材の育成には一定の成功を収めている日本企業も、ことリーダー人材の育成に関しては出遅れている印象が否めない。そしてそのことが、成長分野における事業展開のスピード不足、不振事業の立て直しの遅れ、買収した海外企業の統合や運営の失敗につながるなど、さまざまな形で成長の阻害要因となっている(なお、ここでのリーダー人材とは、規模はさまざまながらチームを率いて一つの事業を統括できる人材や、CFOやCTOのように特定機能分野の統括ポジションを任せられる人材を指す)。

 筆者は、10年以上にわたりマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社でコンサルタントの採用と育成に携わり、何千人という応募者と向き合ってきた。その中には、日本の大企業で育て上げられたトップレベルの社員たちも多く含まれる。採用面接での彼らの評価を通し、日本企業がどのような人材を育ててきたのか、長年その実例を目の当たりにしてきた。同時に、コンサルタントとして働いていた時には、顧客企業の社員としてマッキンゼーとのプロジェクトにアサインされる、将来を嘱望されるメンバーとも濃密な時間を共有した。