上司がイノベーションをつぶす
伊賀:イノベーティブなアイデアが組織の中で潰されてしまうのは、構造的な問題なんです。何かを大きく変えようとすれば、リスクは必ず大きくなる。そのリスクをとるべき理由がなければ、誰もリスクをとろうとはしません。
私は、その理由になりえるのが生産性だと思っているんです。従来のやり方を続けていればリスクはほとんどない。でもそれでは生産性は上がらない。生産性をどーんとあげようと思うと、いくらリスクが高くてもイノベーティブなことにチャレンジしなくちゃならない。
「これがうまくいけば生産性は倍になる。だったらリスクがあってもやってみようじゃないか」という気持ちになることが必要で、つまり目的側に大きなジャンプを求めないと、どうしてもリスクを取るのはやめようという話になってしまうんです。
高岡:そうですね。
伊賀:マッキンゼーで採用グループのマネージャーだったころ、年末の人事考査では「あなたの部署の生産性を上げるために、今年はどんな新しいことをしたか」と問われるんです。方法論を指示されることはないので、毎年、何をしたら生産性が上がるか、自分で考えなくちゃいけない。考えるための時間の確保も必要だし、トライ&エラーの時間も必要。その時間を確保しようと思うと、まずは作業的な部分の生産性を上げるしかない。
でもそういうプレッシャーがなければ、私も毎年粛々と「去年と同じこと」をやっていたかもしれない。今までやってきたことを否定して新しいことをやる。そういうのって誰にとっても面倒で怖いことだから。あちこちから文句も言われますし。
高岡:軋轢がある。
伊賀:軋轢もあるし、とにかく「変わるのが嫌い」という人もいますよね。変化を嫌う人が多いことは、イノベーションが生まれない理由でもあるし、生産性が上がらない理由でもあると思います。