チームの雰囲気を決めるのはリーダーである。職能横断的な製品チームに関する研究によれば、リーダーがメンバーに公平さを持って接した場合、メンバー個々人とチーム両方の生産性がより高かった(英語論文)。また、職務要件の範囲を超えて尽力する傾向も高いことがわかっている。
すべてはトップから始まる。リーダーが礼節を守ることで、従業員のパフォーマンスと創造性が向上し(英語論文)、ミスの早期発見と自発的な行動が可能となり、精神的な消耗が小さくなる(英語論文)。
礼節がチームの有効性に寄与するのは、従業員に安心感と幸福感を与え、気を楽にさせるという部分が大きい。2万人以上の従業員を対象とした私の調査では、リーダーに敬意を表されていると感じている人はそうでない人に比べ、仕事への集中と優先順位付けができている割合は92%高く、意欲は55%高かった(英語記事)。
礼節のある風土をつくることで、従業員が互いに敬意を持って接するようになり、いっそうの協働が促進される。グーグルのキャスリン・デカスと同僚らによる最近の研究からは、チームの風土が組織市民行動(組織への自発的で無償の貢献行動)にいかに影響を及ぼすかが示されている(英語サイト)。部下にもっと効果的な協働とさらなる貢献を望むなら、チームの風土、リーダーによる率先垂範、そしてチームの規範についてよく考えてみるべきだ。
ここで重要なのは、礼節はただ強制すればよいわけではないという点だ。従業員と継続的に対話し、礼節をわきまえるとは何を意味するのかをきちんと定義しよう。対話のプロセスに彼らを引き込むことで、礼儀正しい振る舞いへの相互責任を負うことについて、より多くの支持を得て実現を後押しできる。
礼節について従業員と話し合うことは、どんな組織にとっても有益だ。カリフォルニア州アーバインの法律事務所、ブライアン・ケイブのマネージングパートナーであるスチュワート・プライスと私は、集団の規範を定義するためのエクササイズを主導した。
我々は従業員に、「どのような人になりたいか」を尋ねた。そして、互いに責任を負ってもよいと彼らが考える規則、つまり「自分の組織にふさわしい規範」を挙げるよう求めた。すると1時間強で、従業員は10箇条の規範を考え出して合意した。同社はこれらを採用し「礼節規定」としてまとめ、ロビーの目立つ場所に掲示している。プライスの証言によれば、この礼節規定は、同社がオレンジ郡で「最も働きがいのある職場」の第1位となったことに直接貢献したという。
規範を形成するだけでは十分でない。従業員がそれらを理解し尊重するよう、訓練する必要がある。私が実施した調査で、無礼に振る舞ってしまう理由を尋ねたところ、自分の組織が傾聴やフィードバックといった必要な基本的スキルを提供していないから、と回答した人は25%超に上った(英語論文)。
礼節に関するメッセージを組織ですでに打ち出しているのに、従業員の振る舞いが好ましくない場合には、「そのための備えを提供しただろうか」と自問してみよう。礼節ある振る舞いを誰もが承知しているものと、決めつけてはならない。基本的なスキルを学んでいない人も多いのだ。
大手企業のなかには、礼節の研修を公式に提供しているところもある。マイクロソフト社内で人気の「プレシジョン・クエスチョニング」(精密な問いかけ)の講座が教えているのは、自分自身のアイデアに疑問を投げかけること、健全で建設的な批判をする方法、緊迫した状況でも感情を押し殺さずにうまく制御しながら行動する方法だ。
ロサンゼルスのある病院では、気難しい医師たちに「礼儀作法教室」への参加を義務づけ、不遜な態度を改善させて訴訟の可能性を抑えるよう努めている。教室では、職場の雰囲気をつくるのは医師であり、それは実習生にも影響すると教えている。
リーダーがチームの礼節度に注意を払えば、そこには報いがある。協力関係とパフォーマンスが向上するのだ。メンバーの振る舞いが望ましくない場合には、必要に応じて規範を修正するか、研修を提供してみるとよい。
HBR.ORG原文:How Rudeness Stops People from Working Together January 20, 2017
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クリスティーン・ポラス(Christine Porath)
ジョージタウン大学マクドナー・スクール・オブ・ビジネス准教授。