●問題は私にあるのか、それとも彼らにあるのか
第1に、あなたの懸案事項が好みの問題ではなく、原則の問題であることを確認するために、信頼のおける筋からフィードバックを得る。たとえば、ポーラは彼女が定める新基準が会社の方針と矛盾しないことを確認するために、人事に相談しておくといい。また、次の3つの基準を満たす同僚の知恵を借りるのもいいだろう。
(1)ポーラの作業チームについて意見を持っている。
(2)より広範な会社の規範について良識を持っている。
(3)たとえポーラにとって気に入らないことであっても、真実を伝えてくれる。
問題が明らかに会社の方針に違反している場合、人事または他のふさわしい部署に知らせる。だが問題が白黒はっきりしないグレーゾーンにある場合は、次のステップに移る。
●上層部の支援を確保する
悪しき慣習について最大の問題は、それが組織内でどこまで上層部に、また広範囲に受け入れられているか、新任のあなたにはわからないことだ。たとえば、新たな赴任先で社員が勤務時間中に私事にいそしむ問題について、あなたと同列のマネジャーたちが暗黙の了解を与えている場合は、新しい規範を確立することがはるかに困難になる。
もし上層部がこの問題に目をつぶっていたのであれば、 さらに困難さが増すだろう。その場合は、あなたが担当する作業チームに問題を提起する前に、同列のマネジャーたち、そして直属の上司と話し合う必要がある。
上司や同僚と連携する必要があると判明した場合は、この話題を切り出す前に情報を集めておくとよい。問題の頻度はどの程度か、コストや顧客サービス、または他の重要な業績への影響はどのくらいかを概算する。
改革の提案書を携えて同僚と上司に話を持ちかける際は、「憤慨している」とか「独りよがりだ」という印象を決して与えないように気をつける。というのも、彼らも問題の一部かもしれないからだ。「倫理的十字軍」にしてしまうと、能力のあるリーダーとして尊重されるよりも、熱狂者として片づけられるおそれがある。
ここでの話し合いにおける目標は、相手と共通の大義、あるいは少なくとも積極的な同意を得ることだ。相手が望む以上に速いペースで推し進めてはいけない。データに語らせ、対処策について相手があなたと同じ結論に達するように仕向けるとよい。
サポートを確保したら、それを文書に残そう。Eメールで構わないが、後押ししてくれる人たちに、あなたの味方として言及するつもりがあることを知らせる必要がある。
●問題を公にする
次に、あなたのチーム内で懸案事項について公に話し合おう。
悪しき慣習は沈黙によって維持される。つまり、全員が後ろめたさを感じているときは、誰も悪しき慣習について意見を交わさない。懸案事項が頻出していることをオープンに認める必要がある。あなた自身も悪しき慣習に流される可能性があると認めることで、あなたが道徳的に優れているなどと主張しているわけではないことを示しておくとよい。
とはいえ、原則に基づく立場をしっかりととろう。ルール違反を批判することに割く時間を少なくして、目に見える効果について語る時間を多くしよう。客や同僚、オーナーなど、よりよい処遇を受けるにふさわしい人たちへの具体的な効果だ。
この時点で、何か意見はないか、さらりと尋ねておく。あまり時間をかけ過ぎてはいけない。でないと、抵抗勢力に反論をまとめる時間を与えることになる。
たとえば、全員参加の会議で問題点を話し合っているときは、フィードバックを喜んで受け入れること、そしてより多くの意見を聞くために週の終わりにフォローアップ会議を予定していることを知らせておく、といった具合だ。あなたが提案する改革に予期せぬ結果が発生するリスクがある場合は、真摯に理解したいとメンバー全員にはっきりと伝えるのだ。
だが同時に、この問題についてあなたが考え抜いてきたこと、そして提起されるリスクは検討に値するとあなたが納得する必要があることも、メンバーに知らせるとよい。
あなたが上層部と同僚と連携していることにも言及する。ただし、これはごく控え目にすべきだ。やり過ぎれば、弱腰に見える。一方で、まったく触れないと、足下を見られる可能性もある。あなた自身の論拠を最初に伝えてから、他の人たちから許可ではなく、サポートを得ていることに言及することで、適切なバランスをとる。