●将来に焦点を合わせる

 問題が法律上または人事上の一線を越えていない限り、過ぎ去ったことは過ぎ去ったこととしてチームに伝える。過去は重要でなく、将来こそが重要なのだ。ただし、改革はいますぐ必要である旨を通告する。

 ●違反を見つけたら、落ち着いて毅然とした態度で指摘する

 まずは、チームが新しいルールを守っているかどうかを見守ろう。順守を確認できれば、声に出してほめる。だが、あなたの本気度が試される機会は遅かれ早かれ出てくるだろう。違反は意図的にというよりも、むしろ惰性から起こる可能性があるが、動機は重要ではない。

 一線を越える事例が最初に発生したとき、あなたの対応を見ているのは、違反者本人ではなくチームの残り全員だ。 人間は社会から学ぶ生き物だ。我々は普通、他の人が社会的規範を順守または違反したときに何が起きるかを観察することで、それを規範として認識する。少しばかりの制裁を加えることを渋れば、あなたが提案した新たなルールについて困惑の種をまくことになる。

 逸脱を非難または懲戒する際は、穏やかだが毅然とした態度を貫く。この問題を個人的に受け止めてはいけない。あなたの地位が否定されているわけではない。これはあなたに関する問題ではなく、基準に関する問題だ。落ち着いて、かつ揺るがぬ態度で、逸脱行為者に立ち向い、適切な処置をするとよい。

 ●加担者を放置しない

 違反に気づいていたが、何も言わなかったメンバーにも対処しよう。あなたが新たなルールの徹底を望んでいるだけでなく、新たに同意された価値観を共有することを他のメンバーたちにも期待していることも、伝える必要がある。仲間同士が新たなルールに基づいて互いに注意し始めるようになれば、改革は進む。

 上記のステップに従えば、新たに担当するチームの心を離すことなく、基準を引き上げる道が開けるだろう。おそらく、あなたのリーダーシップスタイルは、チームメンバーがこれまでなじんできたものとは、昼と夜ほどの違いがあるだろう。しかし原則を守り抜けば、変化を起こすことは可能だ。

 信念を曲げてはいけない。あなたがリーダーに選ばれた理由は、そもそもそこにあるのだから。


HBR.ORG原文 What to Do When You Inherit a Team That Isn’t Working Hard Enough, June 02, 2017

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ジョゼフ・グレニー(Joseph Grenny)
ビジネスパフォーマンスについて優れた論評で知られる著者、社会科学者。また基調講演者としても活躍。著書は米紙『ニューヨーク・タイムズ』で4回ベストセラー入りし、28言語に訳され、36ヵ国で出版されており、フォーチュン500企業の300社で成果を上げている。革新的な企業研修とリーダーシップ開発で知られるバイタルスマーツ(VitalSmarts)の共同創設者でもある。