「市場シェア」は、最も広範に活用されている半面、最も誤用されている指標の1つだ。今年5月、『フォーブス』誌はテスラへの熱狂に水を差そうとした。2017年第1四半期の世界EV市場で、ルノー・日産連合がテスラの1.5倍を売り上げ首位に立ったという事実を挙げ、同社が市場リーダーではない根拠としたのだ。
しかしテスラは最近、モデル3の利益率が2018年には25%に及ぶだろうと発表している。この数字は、モデルSやモデルXと同水準であり、フォードとGMの利益率の倍近い。そう考えると、利益シェアは販売台数のシェアよりもずっと有用な指標だ。
しかし利益シェアにも、根本的な問題が2つある。人々の意識を、将来「何が起きるか」ではなく、「何が起きたか」という過去に向けさせてしまうことだ。また、市場の方向性ではなく、自社の実績や競争ばかり意識させることにもなる。利益シェアはわりと有用だが、問題も残るわけだ。
そして市場シェアの最大の問題は、「市場」の定義そのものである。ある人々はテスラの市場をEVと定義するが、別の人々は大型高級車市場がターゲットだと主張する。モデルSの販売台数は、米国でメルセデス、BMW、ポルシェの大型高級車の合計販売台数を上回っているからだ。
テスラの「ルーディクラス・モード」(2.5秒で時速0マイルから60マイルに加速するモード)は大きな注目を集めた。では、「キャンピング・モード」はどうだろうか。これは実在のモードではないが、熱狂的テスラファンたちが編み出した新しい使い方で、テスラでキャンプをするという新たなカルチャーを生み出している。座席を倒せば身長210センチの人が横になれるし、天井にはガラスルーフが広がり、モデル3ならバッテリーのわずか7%で一晩中快適な車内温度を保てるのだ。
新しいカテゴリーを創造する人々によって、既存の市場で当たり前だった境界線が曖昧にされると、古い指標は通用しなくなり、人々は不意を突かれたり、困惑したりする。これを解決する方法は、市場シェアの指標を成長率シェアで補完することだ。