●先延ばしの誘因をなくす
やりたくないと思っているタスクを先延ばしにしているのは、ピチルが特定した7つの誘因のうちのどれか、考えてみよう。そして、そのタスクのとらえ方を変えてみよう。タスクを終えるのはとてもステキなことだと思えるようにするのだ。
たとえば、四半期報告書を書くのがタスクだとしよう。この作業が退屈だと感じているなら、ゲームに変えてしまうといい。20分間に何文字書けるか試すのである。あるいはタスクがあいまいで体系化されていないと感じているなら、ワークフローをつくって、あなたとチームメンバーたちが毎月、完遂できるよう正確なステップを設定するといい。
●抵抗を感じない範囲内で取り組む
タスクを先延ばしするきっかけがあると、なんとしてもそのタスクをやりたくなくなる。とはいえ、どのくらい抵抗できるものなのだろうか。
たとえば、これから始まるプロジェクトに備えて、分厚い調査書を読み切らなければならないとしよう。抵抗レベルを判定するために、そのタスクに注げる集中力をスライド制で考えてみる。たとえば、調査書を読むことに1時間集中できるだろうか。だめだ、長すぎる。では30分ならどうか。タスクにもはや抵抗を感じなくなるまで、時間を短縮する。そして、その時間だけやってみるのである。
●とにかく、何かしら始める
タスクに取りかかるという第1の難関を超えれば、継続して取り組むのは比較的容易だ。先延ばししがちなタスクが、想像していた通り大変であることはめったにないからだ。いったん始めれば、そのタスクを意識下で再評価することになる。その結果、実際のタスクには、当初想定していたほどの先延ばしにすべき理由がないことがわかるかもしれない。
調査によれば、完了したプロジェクトよりも、未完了または中断されたプロジェクトのほうが記憶に残るようだ。キャッチーなメロディの歌を聞いていたのに思いがけず中断されると、その日の残りの時間はそれがずっと頭から離れないのと同じだ。タスクをいったん始めれば、あとはそれを処理し続ければよい。そして、いったん中断してもタスクを再開する確率も高まる。
●先延ばしの代価をリストアップする
この戦術は、比較的大規模なタスクを先延ばししている場合に最も効果がある。夕方のジョギングをしない代価をリストアップすることに20分を費やす価値はないが、定年退職に備えての貯蓄といったタスクについては、大いに役立つ。退職に備えた貯蓄を先延ばしにすることで、社会生活や家計、ストレス、幸福、健康などに及ぶ影響を、徹底的にリストアップしてみるといいだろう。
また、公私や大小を問わず、先延ばししていることをリストアップすると同時に、それぞれについて先延ばしの代価を算出するのも、よい方法だ。
●接続を切る
メールであれSNSであれ、友人や家族とのメッセージのやり取りであれ、とにかくデジタル機器は集中力を妨げる魔法の箱だ。これが特に問題になるのは、タスクがあいまいで、体系化されていない場合(先延ばしの2つの誘因)である。
先延ばしするためにデジタル機器を使っていることに気づいたら、接続を切るといい。私は執筆時に、携帯電話を別の部屋に置き、またパソコンのWi-Fi機能をオフにすることもある。フリーダム(Freedom)やセルフコントロール(Self Control)といったアプリに頼ることもある。これらのアプリは気をそらせるサイトへのアクセスを遮断する。ふたたびアクセスできるようにするには、物理的にパソコンを再起動させる必要があるのだ。
やりすぎに聞こえるかもしれない。その通り。しかし、集中を妨げるデジタル機器を事前にオフにしておけば、本当に重要なことに取り組まざるを得なくなる。
先延ばしを阻止する方法はある。しかも実証済みだ。
極めて重要なタスクを完遂できるよう、次回タスクに抵抗を感じたときは、次の方法を試してみてほしい。先延ばしの誘因がないかを調べる。抵抗を感じない時間内で取り組む。とにかく始めるよう自分を強制スタートさせる。先延ばしすることの代価をリストアップする。 あるいは、インターネットの接続を切る。
あなたが私と同じタイプなら、気がつくと先延ばしにしている頻度が格段に少なくなっているはずだ。
HBR.ORG原文:5 Research-Based Strategies for Overcoming Procrastination, October 04, 2017.