石川 これまで日本企業は、様々な取り組みで利益率を改善し、再投資に使えるキャッシュを増やすように努めてきました。日本経済は堅調傾向にあり、一見すると、多くの企業の利益率は改善に向かっているように見えます。しかし、実際には、半数の業界で5年前に比べて利益率は悪化しているのです(図2)。まだまだ多くの日本企業の利益性は、さらに改善できる余地があると思います。

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出所:アクセンチュア

4週間以内に課題を見つけ
コストダウンの方策を提案

――ZBBは、従来のコスト削減と何が違うのでしょうか。

谷村幹也
アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
プリンシパル・ディレクター

一橋大学大学院商学研究科卒。2003年アクセンチュア入社。ハイテク産業や通信産業など幅広い業界を対象に、営業・マーケティング戦略、新規事業立ち上げなどのテーマを支援。直近ではハイテク産業などのチェンジマネジメントや管理会計、コストコントロール戦略などを支援。

谷村 大きな違いとしては、継続的な取り組みであること、1年目に大きな効果が出ることが挙げられるでしょう。日本企業にありがちなのは、短期間のプロジェクトによるコスト削減です。しかし、これでは、半年、1年後に再びコスト増に見舞われるケースが少なくありません。

 ZBBでは、部門・部署、製品・サービスのカテゴリ、および地域・支社ごとに、詳細なレベルに至るまであらゆる支出を100%把握した上で、成長の加速につながる最良な支出方法を検討し、実行します。

 企業にとっての最優先課題は、削減したコストのリバウンドを防ぎ、より高い利益率の事業活動を展開するとともに、リソースの再配分によってさらなる成長を加速させることです。そのためには、ZBBによるコスト管理を、カルチャーとして組織全体に根づかせることが必要です。

 また、短期間で効果を出すために、費用の明細を一気に棚卸しします。企業データをすべてアウトソーシングセンター(大連など)に送り、アクセンチュアが定義した20程度の大分類、120~150程度の中分類にコストを再定義することで、より細かいレベルでの可視化を行なっています(図3)

 すでに長年の経験から、業種業態、また費用科目で、どこをターゲットにしたらいいのかといった知見が蓄積されています。そのため、およそ4週間以内には、どこに課題があるかを把握し、コストダウンの方策を企業に提案することができます。日本の大手企業の場合、無駄なコストが10%くらい眠っていることが多く、一般に数億~数十億円のコスト削減が見込めます。

出所:アクセンチュア