最初の実験では、1つ目のグループには過去半年間で恥ずかしい思いをした経験を、2つ目のグループには誇りに感じた経験を述べてもらった。その後、各参加者にクリップの新しい使い方を10分間考えてもらった。我々の立てた仮説はこうだ。量を目標にすると逆説的に良質なアイデアも生み出せるのと同様に、「恥ずかしい話」をすれば心理的に「抑制」が取り払われ、いっそう創造的になるのではないだろうか。

 この実験では、参加者の成果を2つの基準で点数化した。頻度(生み出したアイデアの量そのもの)と、柔軟性(生み出したアイデアの種類)である。たとえば、ある参加者が「イヤリング、ネックレス、指輪、ブレスレット」と回答し、別の参加者は「イヤリング、傷の縫糸、美術作品、スクリュードライバー」と答えたとする。この場合、両者とも4つのアイデアを出したが、後者のほうがアイデアの幅が広く、より高い柔軟性を示したことになる。

 その結果、恥ずかしい話を打ち明けたグループは、頻度の平均スコアが7.4で、柔軟性が5.5。誇らしい話をしたグループの5.843と4.568に比べると、はるかによい結果だった。

 次の実験では、上記の作用がグループ単位でどう発現するかを調査した。成功体験を語ることで、階層や他者との比較が気になり、創造性が抑制されるのではないか。かたや、欠点について話し合うことで胸襟を開き、リスクを気にしなくなるため、ブレインストーミングの効果が高まるのではないか。これが我々の仮説である。

 実験では、さまざまな業種・企業のマネジャー93人を3人のチームに振り分け、2つの異なる「自己紹介」と「ウォームアップ」を行うように指示した。半分のグループには、恥ずかしい経験を、残りの半分には誇りに感じた経験を語ってもらう。ただし、それらの経験は過去半年間に起こった個人的なものでなければならない、という条件つきだ。

 我々は、会話の展開を慎重に観察した。恥ずかしい話をするよう指示されたグループは、初めのうちは狼狽し不安そうだった。しかし、やがて1人が「では、私から……」と口を開くと、数分後には、3人組はにぎやかな笑い声を上げるようになった。一方、誇りに感じた話をするよう指示されたグループは、何の問題もなく話を始め、もっと落ち着いていた。しかし、笑いが起こることはめったになく、儀礼的にうなずくだけだった。

 10分後、我々はブレインストーミングの内容を伝えた。段ボールのユニークな活用法を、10分間で可能な限りたくさん考えるという課題だ。1つ目の実験と同様の基準(頻度と柔軟性)を使って発言を点数化した結果、恥ずかしい話をしたグループは、誇りに感じた話をしたグループに比べて26%も多くのアイデアを生み出し、その使用法のカテゴリーは15%も多岐にわたっていた。

 率直さが、創造性の向上につながったのである。そこで、我々はブレインストーミングの新たなルールを提案したい。アイデア出しを始める前に、自虐的なエピソードを話すのだ。

 あまり気が進まないだろうか。好ましい印象を与えたい同僚が相手ならば、特にそうかもしれない。しかし、結果的に幅広く創造的なアイデアが生まれ、さらなる好印象をきっと与えることになるだろう。


HBR.ORG原文:Research: For Better Brainstorming, Tell an Embarrassing Story  October 02, 2017

■こちらの記事もおすすめします
ブレーンストーミングの欠点を補うブレーンライティング
オープン・イノベーションの成功には、同調圧力の回避が不可欠である
失敗を認められるリーダーはチームの創造性を引き出す

 

リー・トンプソン(Leigh Thompson)
ノースウェスタン大学 ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント教授。著者にCreative Conspiracy(未訳)、Stop Spending, Start Managing(未訳)などがある。